June, 19, 2014, Bonn/Vancouver--ボン大学(University of Bonn)とブリティッシュコロンビア大学(university of British Columbia)の研究チームは、ミラーを使わずに角を曲がった箇所を見ることができる新しいカメラシステムを開発した。
このカメラは、情報源として散乱光を利用している。光の一部が回り込むようにして壁に当たり、最終的にカメラに返ってくる。「ある種の光のエコーを記録している。つまり、時間分割されたデータだ。それを基に対象物を再構成できる。光の一部が未知の対象に触れ、その形状や外観などについて貴重な情報を運んでくる」とコンピュータ科学研究所教授、Dr. -Ing. Matthias B. Hullin氏は説明している。そのようなエコーを計測するには、特殊なカメラシステムが必要になる。同教授は、カナダ、ブリティッシュコロンビア大学の研究チームとこの新しいカメラを共同開発し、ボンに帰った後、さらに改良した。従来のカメラと違い、新しいカメラは光が来る方向だけでなく、光が光源からカメラに届くまでの時間も記録する。
これの技術的な複雑さは比較的低く、適切なイメージセンサがかなり前から市販されている。実際の課題は、そのようなタイム・オブ・フライト(TOF)計測から所望の情報を引き出すところにある。Hullin氏は、会話ができないほど酷く反響する部屋の状態と比較する。「原理的には、たくさんの光の反射の総和を計測しているにすぎない。反射光は、様々な光路でカメラに届き、イメージセンサ上で相互に重なっている」。
マルチパス干渉として知られるこの問題は、以前からエンジニアの頭痛の種だった。従来、不要なマルチパス散乱を除去して、信号の直接部分だけを利用しようとしていた。最先端の数学モデルをベースにしてHullin氏の研究チームは、通常は信号というよりもノイズと考えられるものから所望の情報だけを取り出すモデルを開発した。マルチパス光も全く視界にない対象物から出ているので、研究チームは実際には見えないものを見えるようにすることができる。
Hullin氏によると、この方法の精度には限界がある。「結果はまだおおよそのアウトラインが分かるだけである。しかし、技術要素と数学モデルの開発が急速に進むと、いずれもっと解像度がよくなる」。同教授は、同じアプローチが、例えば通信、リモートセンシング、医療イメージングにも使えると考えている。