March, 3, 2021, Berkeley--カリフォルニア大学バークリー校(UC Berkeley)の研究者は、光波の特性を利用する新しい方法を発見した。これにより光によるデータ転送量が劇的に増加する。チームは、同心円でできたアンテナからの捻れた個別レーザビームの放出が、人の髪の毛の径とほぼ同等であることを証明した。これはコンピュータチップに適合できるサイズである。
Natyure Physicsに発表された新研究は、コヒレント光源によって多重あるいは同時伝送可能な情報量を押し広げる。一般的な多重例は、1本のワイヤで多数の通話伝送であるが、直接多重できるコヒレントツイスト光波の数には基本的な限界があった。
「ツイスト光を造るレーザが直接多重されたのはこれが初めてである」とUC Berkeley電気光学、コンピュータサイエンスの主席研究者Boubacar Kantéは話している。「われわれが報告した技術は、軌道角運動量(AOM)という光の特性により、現在のデータ容量限界を克服する。生体イメージング、量子暗号、大容量通信やセンサにおけるアプリケーションで、それは大変革となる」。
Kantéによると、現在の電磁波による信号伝送法は、その限界に達しつつある。例えば周波数は飽和に達しており、ラジオで限られた数の局にしか同調できないのはそのためである。偏光は、光波が2値、水平と垂直に分けられ、情報伝送量を2倍にできる。3Dムービーを作るときにフィルムメーカーは、これを利用し、2セットの信号を受信できる特殊なメガネを視聴者に与え、ステレオ効果や深度幻影を作り出す。
渦の潜在性を利用
しかし、周波数と偏光以外では、軌道角運動量(AOM)がある。これは研究者の関心を集めている光特性である。これがデータ伝送容量を飛躍的に増やすからである。AOMを考える一つの方法は、それを竜巻の渦と比較することである。
「光の渦は,無限の自由度があり、原理的に無限のデータ量をサポートする。課題は、無限のOAMビーム数を高信頼に作り出す方法を見つけることだった。これまで、そのようなコンパクトなデバイスで、それほど高荷電のOAMビームを作り出したものはいなかった」(Kanté)。
研究チームは、アンテナから始めた。電磁気学では最も重要なコンポーネントの一つ。この研究におけるアンテナは、トポロジカルであり、その本質的な特性は、デバイスが捻られ、曲げられても維持される。
光リングを作る
トポロジカルアンテナを作るためにチームは、電子ビームリソグラフィを使って、半導体材料InGaAsPにグリッドパタンをエッチングし、次にその構造をイットリウム鉄ガーネット(YIG)に結合した。研究チームは、最大径約50µm、3つの同心円のパタンに量子井戸を形成するためにグリッドを設計した、フォトンをトラップすることが目的である。その設計が、フォトニック量子ホール効果として知られる現象をサポートする条件を作り出した。この効果は、磁場を印可したときのフォトンの動きを説明するもので、光を強制的に一方向にのみにリング状に伝搬させる。
「磁場による量子ホール効果は、エレクトロニクスでは利用できるが,オプティクスではできないと考えられていた。光周波数では、既存材料の磁性が弱いからである。量子ホール効果が光で機能することを示したのはわれわれが最初である」(Kanté)。
2Dマイクロ構造に磁場を垂直にかけることで研究チームは、表面上に円形軌道で伝播する3つのOAMレーザビーム生成に成功した。その研究では,レーザビームが276の量子数を持つことも示した。これは、1つの波長で軸の周りに光が捻れる回数を示している。
「もっと大きな量子数を持つとは、アルファベットで使える文字が増えるようなものである。われわれは、光に、そのボキャブラリを増やすようにさせる。われわれの研究では、通信波長でこの能力を実証したが、原理的には、他の周波数帶にもそれは適用可能である。われわれが3つのレーザを造って、データレートを3倍にしたとしても、ビーム数とデータ容量に限界はない」(Kanté)。
Kantéによると、研究室での次のステップは、電気を電源として利用する量子ホールリングを作ることである。
(詳細は、https://engineering.berkeley.edu)