Science/Research 詳細

だまし絵風の形状を持つ有機分子による強い円偏光発光色素材料開発

March, 2, 2021, 東京--北里大学理学部化学科の長谷川真士講師、野島裕騎大学院生(博士後期課程1年)、真崎康博教授と近畿大学理工学部応用化学科の今井喜胤准教授の研究グループは、エッシャーのだまし絵などの要素として知られる不可能図形をモチーフとした発光分子を用いて不斉構造(Chirality)を設計し、強い円偏光発光(Circularly Polarized Luminescence: CPL)を示す発光色素を開発した。
 不可能図形は古くから心理学、数学、芸術、建築の領域で題材とされていますが、こうした形状は有機化学的な視点で観察するとキラリティーを持つことがわかります。この点に着目し、二重にねじれた不可能図形のモチーフを発光分子で再現することで、顕著なCPL特性を示す分子の開発に至りました。
 新しく合成したこの分子は鮮やかな青色蛍光発光を示し、通常のキラル化合物では達成できない顕著なCPL特性を示す。実際の発光特性を理論計算と合わせて検証したところ、ねじれた化合物の形状全体に励起状態が非局在化することが強いCPL特性に貢献することを明らかにした。今回の発見により、未知であったCPLを示す蛍光色素の合理的な分子設計指針が明らかとなり、円偏光有機EL材料に向けた有望な発光分子の開発と、それに続く円偏光を利用した三次元ディスプレイの開発が大きく前進する。
 研究成果は、Chemistry – A European Journal電子版に掲載され、Hot PaperならびにCover Picture(表紙)に採用された。
(詳細は、https://www.kitasato.ac.jp)