February, 2, 2021, Lausanne--EPFLのエンジニアは、高級時計メーカー、Vacheron Constantinと提携して、サファイア時計水晶内の3D彫刻にレーザを使用する画期的なシステムを開発した。
スイス連邦工科大学(EPFL)のエンジニアは、時計の水晶に彫刻する際に時計職人の技術に取り組んだ。レーザは、水晶のまさしく中核に細い線を引くことはできるが、仮想現実(VR)ヘッドセットを使ってガイドされる必要がある。
Neuchâtel MicrocityにあるGalateaのエンジニアは、歴史ある技工へのハイテクアプローチを開発するために、Vacheron Constantinと2年間協働した。「われわれは、新技術を使って、伝統的なノウハウ、その動きの精妙さを失うことなく、職人が探求できる可能性の範囲を広げたかった」とYves Bellouard教授は話している。Vacheron Constantinのエンジニア、プロジェクトマネージャ、Paul Bertusiは、「この極めて伝統的な方法、当社が265年以上磨きをかけてきた方法にイノベーションを組みこみたかった」とコメントしている。
彫刻技術の再発見
プロジェクトは2016年に始まった。BellouardがEPFLに入り、レーザと材料との相互作用の仕方、マイクロエンジニアリングで何が潜在的なアプリケーションかを研究するためにGalatea Labを設立した直後である。同氏のチームは、物質の特性を変えることができる高強度、超短波レーザパルス、(2018年ノーベル物理学賞重要技術)を利用した。このようなパルスの発見は、全く新しい研究法に道を開いた。「その時まで、材料内部で作業することは不可能だった。Vacheron Constantinの親会社、Richemontと、この技術と職人的技能との統合について話した。また、それを時計彫刻に適用することが最適選択のように思えた」と同氏は話している。
過去12年にわたり、Vacheron Constantinの彫刻家として働いているEmmanuelle Maridatは、それが素晴らしいアイデアであると考えている。この新しい局面を加えることで、同氏は専門的職業の変革の機会を期待している。
しかし、レーザ彫刻は複雑な作業であることが分かった。特に、仮想空間で手の動きを制御する場合である。微小な光ビームとデジタルペンだけを使って水晶内部深くにラインをエッチングすることは簡単ではない。また、ラインは肉眼で見るには小さすぎる。研究チームは、様々な視覚デバイスを試したが、最終的に仮想現実(VR)ヘッドセットに落ち着いた。しかし、そのヘッドセットは、さらなる微調整が必要だった。
Maridatが見つけた最大の困難は、ペンを動かしても物理的抵抗が全くないことだった。
エンジニアは、物理的なリンクと抵抗の感覚を回復する方法を見つけなければ職人にはなれない。「われわれは、触覚的フィードバックを仮想的に再創造となければならなかった」。
触れる感覚を取り戻す
Galateaエンジニアは、EPFLのスピンアウト、Force Dimensionに接触した。同社は、主に手術ロボット技術を開発しているが、精密時計製造にも関与している。同社の専門技術者が、Maridatになかった物理的抵抗を再創造するデバイスを設計した。設計したのはロボットアームに取り付けたデジタルペン。これは、仮想的に材料を彫刻する際に触れる感覚をユーザに与える触覚技術を利用している。Force Dimensionの共同創始者、François Contiは、「プログラマーは、所望の動きの力と位置についてのデータをマシーンに入れた。するとそれがロボットアームで再生される。つまり職人は、あたかも実際に物体に触れているように適切な抵抗を感じる」と説明している。
そのプロジェクトは終わってはいない。システムは、最終的には違う形になる可能性がある。Bertusiは、「Vacheron Constantinでは、われわれのイノベーションの目標は、非常に優れた時計を作り続けさせてくれる新技術の探求である。3Dで時計の水晶を構造化でき、水晶のどこにても彫刻し、水晶内に本物の3D彫刻を造ることができる、その全てが極めて興味深い可能性を開く」と話している。
(詳細は、https://actu.epfl.ch)