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光応答性有機結晶による近赤外-可視波長変換と光スイッチングを実現

December, 25, 2020, 福岡--九州大学大学院工学研究院の君塚信夫教授、永井邑樹大学院生、森川全章助教らは、光信号に応答する分子が反転対称性を持たない極性結晶を自発的に形成し、かつ結晶中で光異性化することにより結晶が液化すること、さらにこの光誘起“固―液”相転移現象を利用して光第二高調波発生を他波長光でスイッチする光論理ゲート機能を持つ分子システムの開発に成功した。

π共役電子系を持つ有機分子は、分子設計の自由度が高く、無機結晶材料に比べて大きな非線形分極を示しうることから、SHG(Second Harmonic Generation:光第二高調波発生)材料、さらに光コンピュータ要素技術への応用が期待されている。有機分子がSHG特性を示すためには、分子が電気双極子を持ち、反転対称性をもたない極性結晶が得られることが必要。ところが、ほとんどの有機分子結晶は対称中心を持ち、分子が一方向に配向した極性結晶が得られる例は極めて限られる。また、巨視的な異方性を有する極性結晶薄膜の作製技術や、光を用いてSHG特性をスイッチする光論理ゲート機能を持つ安定な有機SHG材料は得られていなかった。

研究では、溶液中で極性結晶を自発的に形成する化学的に安定な光応答性分子を見いだし、気―水界面で巨大な極性結晶薄膜を形成することや、固体結晶膜において近赤外光(1064 nm)を可視SHG光(532 nm)に変換するとともに、光誘起“固―液”相転移に基づき可逆的にon-offスイッチすることに成功した。今後は光論理ゲートなど、光コンピュータの要素技術開発に貢献することが期待される。

研究成果は、Angewandte Chemie International Editionにオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.kyushu-u.ac.jp)