December, 7, 2020, 東京--東京工業大学 理学院 物理学系の佐藤琢哉教授はスイス・チューリヒ工科大学(ETH-Zurich)のManfred Fiebig教授、Christian Tzschaschel元大学院生と共同で、光パルスを用いた反強磁性体に特有の効率的なスピン励起方法を見出した。
スピントロニクスデバイスの高速化を目指すうえで、磁化の反転速度や磁壁移動速度はスピンのダンピングに大きく依存する。これまでスピンのダンピングはスピン励起後の緩和過程に関して集中的に研究が行われ、瞬間的なスピン励起中のダンピングトルクは無視されてきた。
反強磁性体のスピン歳差運動は楕円率の高い楕円運動を描く。そのため、楕円軌道の短軸方向にスピンを励起することで、歳差運動の振幅をより増大させることが可能になる。
研究ではフェムト秒円偏光パルスを用いて反強磁性体スピンを瞬間的に励起し、励起中のダンピングトルクを利用してスピンを短軸方向に傾けることに成功した。
これにより、反強磁性スピントロニクスにおけるスピンの超高速制御の効率的な道筋が明らかになった。さらに反強磁性体の超高速歳差スイッチングにつながると期待される。
研究成果はNature Communications(オンライン版)に掲載された。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp)