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フィルタなしで円偏光を高感度に検出

November, 13, 2020, 横浜--JSTの石井あゆみ さきがけ専任研究者 (桐蔭横浜大学 大学院工学研究科 特任講師)は、鉛ペロブスカイト系化合物に有機キラル分子を導入した結晶薄膜により、フィルタなしで円偏光を検出するフォトダイオードを開発した。

物体表面の傷、異物、ゆがみなどを可視化するために、光の振動方向「偏光」を検出する技術がある。さらに、偏光した光が左右に回転する「円偏光」を検出すると、応力の強度や分布も識別できる。

現在カメラや光センサなどの光検出部に使われているフォトダイオードは、偏光を直接識別できないので、各種のフィルタと組み合わせ、光を空間的に分離する必要がある。このような素子構造のため光の検出感度が低く、特に円偏光の検出は非常に困難である。したがって、偏光をフィルタレスで検出できるセンサの開発が望まれていた。

研究では、鉛ペロブスカイト系化合物と、右手と左手のように重ね合わせることができない掌性(キラリティ)を持つ有機分子からなる有機-無機ハイブリッドのキラル結晶薄膜を作製し、その1次元鎖状構造のらせん方向によって左右の円偏光を選択的に吸収できることを明らかにした。さらに、これを用いて作製したフォトダイオードで、円偏光の回転方向をフィルタレスでは世界最高の感度で検出することに成功した。

これまで可視化できなかった物体の情報や応力の認識など、新しいセンシング技術としてさまざまな可能性が期待される。

研究成果は、Science Advancesオンライン版で公開された。
(詳細は、https://advances.sciencemag.org/content/6/46/eabd3274)