November, 13, 2020, Cambridge--MITリンカーン研究所の研究チームは、最先端の装置と同じ高性能を維持しながら、それよりも遙かに軽量、小型の新しいイメージング分光計を開発した。小型、モジュラー設計により、その新しい装置は、この先進的分析技術を航空機や惑星探査ミッションにさえ搭載される見込である。
イメージング分光計は、一連のモノクロ画像を記録する。画像は、領域の空間的、分光的分析の両方に使用される。この分析アプローチは、大気科学、生態学、地質学、農業および森林管理などの分野で広範に利用されている。しかし、装置のサイズが大きいため、利用できないアプリケーションもある。
Applied Opticsで、MITリンカーン研究所のRonald B. Lockwoodは、その新しいChrisp compact VNIR/SWIR imaging spectrometer (CCVIS)について説明している。その体積は、ほとんどの今日の機器よりも10倍以上小型である。CCVISの一例は、直径8.3㎝、長さ7㎝で、ソーダ缶程度のサイズである。
同分光計は、400~2500nmの波長範囲でスペクトル画像を記録するように設計されている。これには、スペクトルの可視光、近赤外光、SWIR部分が含まれる。
「われわれのコンパクトな測定器は、様々な科学および商業問題のイメージング分光アプリケーションを容易にする。例えば、惑星探査用小型衛星への導入、あるいは農業目的の無人航空システムでの利用などである。この新しい分光計が、気候の変化の研究にも利用できるとわれわれは考えている。これはイメージング分光計の最も興味深いアプリケーションの1つである」とLockwoodはコメントしている。
小型分光計の実現
ほとんどの今日のイメージング分光計は、Offner-Chrisp光学構成を利用している。収差と言われる光学誤差の優れた制御ができるからである。しかし、この設計は、比較的大きな光学設定を必要とする。研究チームが開発した新しいCCVISは、Offner-Chrisp構成のように機能するが、遙かにコンパクトな設計の新しい光コンポーネントを利用する。
新しいCCVISを作るためにチームは、反射屈折レンズを使用した。これは反射素子と屈折素子を1つのコンポーネントに統合したものである。これによりコンパクトな測定器が実現され、同時に光学誤差も制御する。研究チームは、特殊なフラット反射グレーティングも利用した。これは、空気ではなく、屈折媒質に浸されている。このグレーティングは、従来のグレーティングよりも占めるスペースが小さいが、同等の分解能を維持している。
製造容易性
「CCVISは、複雑な電子ビームリソグラフィあるいはダイヤモンド加工技術で製造する凹面または凸面グレーティングではなく、フラットなグレーティングを利用している。われわれはグレイスケールフォトリソグラフィック微細製造アプローチを開発した。ここでは、グレーティング製造にワンタイム露光を使用し、労働集約的な電子ビーム加工を必要としない」とLockwoodは説明している。
その新設計をテストするために、チームは研究室セットアップを利用してその分光計を実証した。実験は、CCVISが、全視野で予想通りの性能を持つことを示した。
「CCVISのコンパクトサイズは、それがモジュール化できることを意味している。スタックすると、視野を拡大することができる。また、光学アライメント、つまりスペクトル性能を不変にするために、温度変化がなく、安定に保つことは比較的容易である」(Lockwood)。
スケールベースのデモンストレーションの究極目標への一歩として、チームは、航空機で徹底テストする完全プロトタイプ開発のための資金を求めている。