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電子の蝶々型の空間分布を1000億分の2メートルの精度で観測

October, 5, 2020, 名古屋--名古屋大学大学院工学研究科の鬼頭俊介博士研究員(当時、分子科学研究所 特別共同利用研究員 兼任)、萬條太駿 大学院博士後期課程学生、片山尚幸准教授、澤博教授らの研究グループと、米国ウィスコンシン大学ミルウォーキー校の獅子堂達也博士は、理化学研究所 創発物性科学研究センター、東京大学、分子科学研究所、高輝度光科学研究センターとの共同研究により、大型放射光施設SPring-8(BL02B1)におけるX線回折実験によって約1000億分の2メートル(0.2Å)の分解能で電子の空間分布を直接観測することに成功した。

固体物質の機能・性質は、構成原子の電子のうち、一番外側を回る電子(価電子)の「軌道」状態に支配される。物質の性質を決定する最小単位が電子軌道であるともいえる。この軌道状態は教科書にも載っている基本的な知識。例えば、鉄やニッケルなどの遷移元素の3d電子軌道は蝶々型や瓢箪型といった特徴的な形をしているとされている。ところが、このような軌道を持つ電子の実空間分布状態を直接観測することは極めて困難だった。

今回、研究グループはSPring-8において、イットリウムとチタンと酸素からできている物質の30µm角の小さな結晶を用いたX線回折実験を行い、研究グループが提案するコア差フーリエ合成(core differential Fourier synthesis; CDFS)法という新しい解析方法によって、チタンイオンの19個の電子のうち“たった1個の価電子”が蝶々型に分布している状態を観測することに成功した。この方法は原理的に全ての元素に適用できるため、今後様々な物質の電子軌道の研究への活用が期待される。
 
研究成果は、Physical Review Research電子版に掲載された。

(詳細は、http://www.nagoya-u.ac.jp/)