September, 30, 2020, University Park--コーネル大学の研究チームは、超薄型グラフェン「サンドイッチ」を利用して、微小な磁界センサを作製した。これは、従来センサよりも大きな温度範囲で動作し、他の方法ではもっと大きな磁気背景に埋もれてしまうような、磁界の微妙な変化も検出できる。
論文は、Nature Communicationsに発表された。
研究チームのリーダーは、Katja Nowack、物理学准教授。論文のシニアオーサでもある。
Nowackの研究室は、スキャニングプローブを使って磁気イメージング実行を専門にしている。その主力プローブは、超伝導量子干渉計(SQUID)で、低温でも、小さな磁界でもよく機能する。
「われわれは、この他のタイプのセンサ、ホール効果(Hall-effect)センサを使って探求できるパラメータの範囲を拡大したかった」と、論文の主筆、博士課程学生、Brian Schaeferは話している。「それは、どんな温度でも機能する。われわれは、それが高磁界でも同様に機能することを示した。ホールセンサは、以前は高磁界で利用されていたが、通常は、その磁界に加えて、小さな磁界変化の検出はできない」。
ホール効果は、凝縮系物理学ではよく知られた現象である。電流がサンプルを流れると、それは磁界によって曲げられ、磁界に比例してサンプルの両側に電圧が生ずる。
ホール効果センサは、携帯電話から、ロボット、アンチロックブレーキまで様々な技術で利用されている。デバイスは、一般に、シリコン、GaAsなど従来の半導体から作られる。
Nowackのグループは、もっと新しいアプローチを試そうと決めた。
グラフェンシート、シングル炭素原子の利用は、ハニカム格子配列され、過去10年はブームだった。しかし、グラフェンデバイスは、他の半導体でできたものに及ばないことがある。グラフェンシートがシリコン基板に直接設置されたときである。グラフェンシートはナノスケールで「グシャグシャ」になり、電気特性を妨げる。
Nowackのグループは、グラフェンの全潜在力を解放するために最近開発された技術を採用した、六方晶窒化ホウ素シートの間にそれを挟む技術である。六方晶窒化ホウ素は、グラフェンと同じ結晶構造であるが、電気絶縁体である。つまりグラフェンシートをフラットなままにしておく。サンドイッチ構造のグラファイト層は、静電ゲートとして機能し、グラフェンで電気を伝導する電子数を調整する。
そのサンドイッチ技術は、共著者、Lei Wangが開発した。同氏は、コーネルナノスケール科学、Kavli Instituteの前ポスドク研究者。
「六方晶窒化ホウ素とグラファイトでカプセル化することで、電子回路システムを超クリーンにする。これによりわれは、以前よりも低い電子密度でも研究することができ、それはわれわれが関心をもっているホール効果信号の強化に有利である」(Nowack)。
研究グループは、室温で報告されている最高のホールセンサと同等に機能するマイクロスケールホールセンサを作ることができた。同時に、4.2Kの低温では、あらゆる他のホールセンサの性能を上回っている。
グラフェンセンサは、非常に精密であるので、6桁も大きな背景場に対して磁界の小さな変動を抽出することができる。そのような微妙な差異は、高品質センサでも難しい。高磁界では、電圧反応が非線形になり、したがって分析が難しいからである。
Nowackは、そのグラフェンホールセンサをスキャニングプローブ顕微鏡に組み込み、量子物質のイメージング、物理現象の研究を行う計画である。例えば、磁界がどのように特殊な超伝導を破壊するか、トポロジカル金属など特殊クラスの材料における電流の流れ方など。
「磁界センサとホールセンサは多くの実世界アプリケーションの重要な部分である。この研究は、超クリーンなグラフェンが、ホールプローブを作る優れた材料として実際に有名にするものである。これらのデバイスの作製は難しいので、実際は、アプリケーションによってはそれは実用的である。しかし、材料成長には様々な経路がありサンドイッチの自動アセンブリが研究されている。グラフェンサンドイッチを手にすると、それをどこにでも利用でき、既存技術と統合することも可能である」とNowackは話している。
(詳細は、https://news.cornell.edu)