September, 24, 2020, Washington--NISTとコロラド大学ボルダーの研究者は、並外れて高速にデータを取得できる最先端の分光計を開発した。新しい分光計は、リモートセンシング、リアルタイム生体イメージング、マシンビジョンを含む多様なアプリケーションで有用である。
分光計は、物質に吸収される、あるいは物質から放出される光の色を計測する。しかし、複雑で詳細な計測にそのようなシステムを利用すると一般に、長い取得時間が必要になる。
研究チームリーダー、NISTのScott B. Pappは、「われわれの新しいシステムは,マイクロ秒でスペクトルを計測できる」と言う。「発電所、ジェットエンジンの動的環境における化学研究、薬剤の品質制御あるいは製造ラインの半導体、生体サンプルのビデオイメージングに使えるという意味である」。
研究成果は、Optics Expressに発表された。これは、初のデュアルコム分光計、繰り返しレートは10GHzである。研究チームは、加圧ガスや半導体ウエファで分光法実験を行うことで、それを実証している。
「周波数コムは、分光法で有用であることがすでに知られている。われわれの研究は、現在の技術の数100倍高速に動作する分光計を実現できる新しい高速周波数コムを構築することである」(Carlson)。
デュアルコム分光法は、光周波数コムとして知られる2つの光源を使う。これは、櫛の歯のように完璧な間隔で波長スペクトルを放出する。周波数コムは、様々な物質を区別するために使用できる幅広い範囲の色にアクセススできるので、分光法に有用である。
非常に高速のアクイジションと広い波長範囲のデュアルコム分光システムを実現するために研究チームは、ナノファブリケーション、マイクロ波エレクトロニクス、分光法や顕微鏡を含む複数の異なる分野の技術を統合した。
新システムの周波数コムは、電子信号で駆動する光変調器を利用し、連続レーザビームを一連の極短パルスに刻む。これらの光パルスは,マイクロチップ上のナノフォトニック非線形導波路を透過し、これによって多数の光の色(波長)が同時生成される。このマルチカラー出力は、スーパーコンティニウムとして知られており、固体、液体、気体の精密な分光計測に利用できる。
チップベースのナノフォトニック非線形導波路は、この新しいシステムのキーコンポーネントであった。これらのチャネルが、1㎝長であるが幅がナノメートルに過ぎない構造に光を閉じ込める。その小サイズと低光損失がチームが作製した材料の特性と結合されることで、一つの波長からの光をもう1つの波長へ非常に効率的に変換し、スーパーコンティニウムを実現する。
「周波数コム光源自体も、ほとんどの他のデュアルコムシステムと比較してユニークである。連続レーザビームが電気光学変調器でパルスに刻んで生成されるからである。つまり、レーザの信頼性と可変性が、幅広い動作条件で著しく高くできると言う意味である。これは、ラボ環境の外での将来のアプリケーションを考えると、重要な特徴である」(Carlson)。
気体と固体の分析
新しいデュアルコム分光計の汎用性を実証するために、研究チームは、それを使って異なる圧力の気体で線形吸収分光を実施した。チームは、わずかに異なる構成でそれを使い、半導体材料に対して非線形ラマン分光として知られる最先端の分析技術を実施した。非線形ラマン分光は、光パルスを使ってサンプルで分子の振動を特性評価する。この技術は、電気光学周波数コムを使ってこれまでに実施されたことはなかった。
ギガヘルツパルスレートで動作する電気光学コムで可能になる高速データ取得は、高速、非反復性イベントの分光計測に理想的である。
「爆発、燃焼イベント中に化学的シグネチャを分析、取得することができるかもしれない。同様に、生体イメージングでは、化学ラベリングなしで、生きた組織のリアルタイム画像を作ることは,生物学研究者にとっては非常に価値が高い」とCarlsonはコメントしている。
研究チームは現在、そのシステムのパフォーマンス向上に知り組んでいる。リアルタイム生体イメージングなどのアプリケーションでそれを実用化するため、また研究室の外でそれを使えるようするために実験セットアップを簡素化し,縮小することが目的である。