September, 17, 2020, Washington--ベルギー、ゲント大学(Ghent University) IMEC研究センタのNina Turkが、OSAで研究発表を行う。
研究チームは、微小導波路を使って表面増感ラマン分光法(SERS)によりプロチアーゼ活性を初めて検出した。この成果は、リアルタイム、ラベルフリー、lab-on-a-chipプロチアーゼモニタリングに道を開く。病気に関わるプロチアーゼを阻止する新薬のためのスクリーニングに高スループットアプローチを提供するものである。
プロチアーゼは、タンパク質を結合するペプチド結合を破壊する。ガン、アルツハイマー病、関節炎を含む多くの病気に関係するので、プロチアーゼは重要な薬剤標的である。
「われわれの学際的なアプローチが、いずれ、様々なプロチアーゼ関連の病気のための、高速、効率的な新薬発見を可能にする。それにより、世界中で何百万の患者の生活改善に貢献する」とTurkは、コメントしている。
チップ上SERS
SERSは、ナノスケール粗さの金属面を使い、光がサンプルと相互作用して生まれる弱い信号を増強する。高感度であるので、その分光技術は、非常に微量の分析物を検出できる。SERSは、プロチアーゼの高感度、選択的検出に用いられているが、これは大きなラマン顕微鏡セットアップを使って実証されているだけである。
最近、ナノプラズモニックスロット導波路が、効率的にSERS信号を励起し収集する新しい方法として登場してきた。これらの導波路は、2つのレールで構成されており、光を誘導する小さなギャップを形成している。ギャップの内部を金ナノ構造でコーティングすることで、SERS効果を生み出すために使用できる。サイズが小さいので、導波路はlab-on-a-chipデバイスに組み込み可能であり、高スループット薬剤発見のために多くの分析物を同時計測できる。
このナノプラズモニックススロット導波路がプロチアーゼのSERS検出に使えるかどうかを見るために、研究チームは導波路を作製し、トリプシンプロチアーゼ検出実験を考案した。チームは、金ナノ構造に結びつくトリプシンのために特殊なペプチド基質を作った。トリプシンペプチドが基質に付着すると、その一部が拡散し、SERSスペクトルで検出できる強度低下が起こる。
チームの実験は、1時間のトリプシンインキュベーションの後、SERS強度が70%低下することを明らかにし、ナノプラズモニックスロット導波路がトリプシン検出に使えることを示した。研究チームは、現在、2以上のプロチアーゼ活性を同時に検出できるように、プラットフォームの拡張に取り組んでいる。