September, 17, 2020, 東京--東京大学大学院工学系研究科の岡村嘉大助教、高橋陽太郎准教授、理化学研究所の十倉好紀センター長、東北大学金属材料研究所の藤原宏平准教授、塚﨑敦教授らの研究グループは、磁性ワイル半金属と呼ばれる近年新たに見つかった磁性体において、巨大な磁気光学応答の実証に成功した。
トポロジカル物質と呼ばれる一連の物質群では、特殊な電子構造に由来した新奇な電磁気応答が理論的に予測されており、次世代エレクトロニクス・フォトニクスへの応用展開が期待されている。
例えば、こうした物質群においては、電子はあたかも非常に大きな磁場がかかっているかのように振る舞い、巨大な異常ホール効果に代表される非自明な伝導現象が報告されている。その一方で、光学応答についても物質のトポロジーに由来した新たな現象の存在が期待されていた。
今回、研究グループは、強磁性でなおかつトポロジカル物質であるCo3Sn2S2において、トポロジカルな電子構造に関連した磁気光学応答の探索を行った。テラヘルツから赤外の広い光学領域において、高精度に磁気光学ファラデー・カー効果を測定した結果、この物質の磁気光学効果が、これまで観測されてきた通常の磁性体と比べてはるかに大きいことがわかった。さらに、光学ホール伝導度スペクトルと第一原理計算との比較を行うことで、観測した光学応答がまさにトポロジカルな電子構造に由来していることを明らかにした。
今回得られた成果は、トポロジカル物質が一般的に大きな磁気光学効果を示すことを示唆している。今後、トポロジカル物質を利用した新しい光デバイスの開発へとつながっていくことが期待される。
研究成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に英国時間9月15日に掲載された。
(詳細は、http://www.t.u-tokyo.ac.jp)