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原子厚マシンビジョンプロセッサが人の眼を模倣

September, 14, 2020, Cambridge--Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences (SEAS)の研究者は、Samsun先端研究所と協力して、2D材料を使って作製した人工知能用、初のニューラルネットワークを開発した。
 2次元(2D)材料は、数ナノメートル以下の厚さの物質。シングルシート原子で構成されていることがある。これらの材料から作られたこのマシンビジョンプロセッサは、1000以上の画像を捉え、蓄積し、認識できる。

SEAS電気工学、応用物理学Gordon McKay教授、Donhee Hamは、「この研究は、2Dエレクトロニクスにおける機能の複雑さで類例のない進歩を強調している。われわれはフロントエンド光イメージセンシングとバックエンドイメージ認識の両方を一度に行った」と説明している。
 研究成果は、Advanced Materialsに発表された。

2004年、グラフェンの発見以来、研究者は、原子厚、2D半導体のユニークな電子的特性、オプトエレクトロニック特性を広範なアプリケーションの基本的な構成要素に利用しようとしてきた。

2D材料で作られたトランジスタは簡素なデジタル論理回路やフォトディテクタに利用されたが、人工知能のような複雑なコンピューティング向け大規模集積は、手が届かなかった。これまで、研究者は、シングルチップ上に2D材料からできた100程度のトランジスタを集積できるだけだった。全体的な視野では、スマートフォンなどの標準シリコンICが、数十億のトランジスタを含んでいるということである。

今回、研究チームは、1000超の2D材料ベースのトランジスタで集積回路を開発した。

「2D材料ベースデバイスは、様々な特性を示すが、低集積レベルは、その機能の複雑さを制約する。シングルチップに1000デバイスを集積すると、われわれの原子厚ネットワークは視覚認識タスクができる。これは、2D材料ベースエレクトロニクスの著しく進歩した機能である」と論文の筆頭著者、SEASのHouk Jangは説明している。

研究チームは、光とよく相互作用する、2D材料、3原子厚、二硫化モリブデン(MoS2)を使った。チームは、これら感光性トランジスタをクロスバーアレイに配置した。これは、人の脳におけるニューロン接続からヒントを得たものである。この比較的簡素なセットアップにより、デバイスは、像を見ることができる眼としても、画像を蓄積し認識できる脳としても機能する。

フロントエンドでは、そのクロスバーアレイは、画像センサのように働く、まさに眼のように画像を捉える。その材料の感光性は、画像が蓄積され、電気データに変換されることを意味する。バックエンドは、同じクロスバーアレイが、その電気データで画像を認識、特定するネットワークコンピューティングとなる。

そのプロセスを実証するために研究チームは、デバイスに1000の手書き数字の画像を見せた。そのプロセッサは、94%の精度で画像を特定できた。

「眼と視神経のように光画像を捉えて電気データにし、このデータの後続の認識は脳ようにメモリ内でコンピューティングされる。こうしてオプトエレクトロニックプロセッサは、人の視覚の2つの中核機能をエミュレートする」とSEAS院生、Henry Hintonは説明している。

「これは、光と相互作用できる2D材料によるニューラルネットワークの初のデモンストレーションである。それはメモリ内でコンピュートするので、別のメモリは不要であり、計算は非常に低エネルギーで実行できる」(Jang)。

チームの次の狙いは、そのデバイスをさらに2D材料ベース、高分解能イメージングシステムに拡張することである。
(詳細は、https://www.seas.harvard.edu)