September, 7, 2020, 東京--光による計測は、物質を壊さずに分析できるという特徴を持っている。特に、分子の種類を見分けることができる赤外光を用いた分光計測は、物質の成分を非破壊的に調べることに利用できる。赤外分光計測を高速化することができれば、短時間内に起こる現象の分析や、短時間内に多くの計測を要する統計的な分析など、計測の応用範囲が広がる。
現存する最も速い赤外分光手法を用いると、1秒間に約100万回の計測が可能だった。
東京大学大学院理学系研究科の井手口拓郎准教授らは、従来手法よりも約100倍速い計測を可能にするタイムストレッチ赤外分光法(time-stretch infrared spectroscopy, TS-IR)の開発に成功し、1秒間に約1億回の計測を実現した。この手法は、様々な波長の光を含んだ超短パルス光を時間的に引き延ばすことで、光の波長情報を時間波形に焼き直して、その時間波形を計測することで分光を行う手法。1つの光パルスで1回の分光計測が可能であるため、1秒間に約1億個の光パルスを出力するレーザと約50億分の1秒で応答する高速光検出器を用いることで、上記の高速計測を実現した。この超高速赤外分光手法により、分子を対象とする様々な基礎研究、産業での新たな応用可能性が開かれると期待される。