August, 24, 2020, 京都--京都大学大学院理学研究科 永井恒平 (博士課程学生)、田中耕一郎 教授らの研究グループは、東京都立大学大学院理学研究科 宮田耕充 准教授らとの共同研究において、高強度レーザ光を固体に照射すると、光と固体中の電子状態が一体となった状態が形成され、新たな対称性である「動的対称性」が創出されることを実証した。
レーザ光は物性を調べるための道具として科学の幅広い分野において認識され、物質との相互作用が長年研究されてきまが、近年は物質の性質を大きく変えてしまうほど強いレーザ光を用いた物性研究が注目を集めている。強いレーザ光は光と物質が一体となった状態を作り出すことが期待されることから、それを用いて新たな機能を創出しようとする物質制御法が模索されていまる。この制御において重要なキーワードが「対称性」。その中でも「動的対称性」と呼ばれる新たな概念がレーザ光によって作られた状態を一般的に記述できることが近年理論的に提案されていたが、固体における実験的検証はほとんどなかった。
研究グループは、赤外域の高強度レーザ光を物質に照射し、その状態における対称性を光散乱過程の系統的な研究により検証した。光散乱における入射光と散乱光の偏光の関係が動的対称性を用いた理論によって包括的に説明できることから、高強度レーザ光が照射されている固体では、光と電子状態が一体となった動的対称性が実現されている状態が確かに形成されていることを明らかにした。この成果は、高強度レーザ光による「動的対称性」を用いた量子情報処理や、光散乱過程を用いた光源開発、光通信技術などへの展開が期待される。
研究成果はCommunications Physicsにオンライン掲載された。