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光を使って超高速データ伝送するプラズモンチップ

August, 20, 2020, Zurich--ETH-Zurichの研究チームは、ファイバオプティクネットワークでデータ転送を高速化できる超高速チップを作製した。チップは、同時に複数のイノベーションを統合しており、ストリーミングやオンライサービス需要が伸びると、重要な開発と見なされる。

ETH-Zurichの研究者は、約20年研究者が実現しようとしてきたことを達成した。European Horizon 2020研究プロジェクトの一環として、研究チームは、高速電子信号が直接超高速光信号に変換できるチップを研究室で作製した。実質的に光品質の損失はない。これは、光を使ってデータを伝送する、ファイバオプティックネットワークのような光通信インフラストラクチャの効率に関しては、大きなブレイクスルーである。

チューリッヒのような都市では、光ファイバネットワークがすでに高速インターネット、デジタル電話、TV、ネットワーヘクベースビデオ、エーディをサービス(ストリーミング)提供に利用されている。しかし、この10年の終わりまでには、このうよな光通信ネットワークは、データ伝送が急速にすなるとその限界に達する可能性がある。

これは、ストリーミング、ストレージ、コンピュテーションのオンラインサービス、人工知能や5Gネットワークの到来で需要が増加するためである。今日の光ネットワークは、データ伝送レートがギガビット領域になっている。この限界は、レーンおよび波長あたり100Gbpsである。しかし、将来的には、伝送レートはテラビット領域が必要となる。

エレクトロニクスと光を同一チップ上に
ETHフォトニクスと通信教授、Juerg Leutholdによると、「新しいソリューションの要求が高まっている。このパラダイムシフトの決め手は、一つのチップに電子素子と光素子を統合することにある」。フォトニクス分野は、情報の伝送、ストレージ、処理のための光技術を研究している。

ETH研究者は、この組合せをそのとおりにに達成した。ドイツ、米国、イスラエル、ギリシャのパートナーと共同で行った実験で、電子と光ベース素子を初めて一つの同じチップに統合した。これは、技術展望からは大きな一歩である。これらの素子は現在、別のチップで製造され、次にワイヤで接続されなければなないからである。

このアプローチの結果をUeli Kochは、次のように説明している。
 一方で、電子チップとフォトニックチップを別々に製造することは高価である。他方、電子信号を光信号に変換する際にパフォーマンスが妨げられ、したがって、光通信ネットワークで伝送速度が制限されることになる、
 研究成果は、Nature El;ectronicsに発表された。

最大速度のためのコンパクトサイズ
 「別のチップを使って電子信号を光信号に変換すると、信号品質を著しく失うことになる。これが、光を使用するデータ伝送速度を制限する」とKochは説明する。したがって、同氏のアプローチは、変調器を利用する。これは電気信号を光波に変換することで所定の強度の光を生成するチップ上のコンポーネントである。変調器のサイズは、変換プロセスで品質と強度の損失を回避するために可能な限り小さくなければならない。また、光を現在、可能なよりも高速に伝送するためにも小さくなければならない。

このコンパクトさは、電子コンポーネントとフォトニックコンポーネントを層状に密接に重ねることで達成される、また、それらを「オンチップビア“on-chip vias”」で、直接チップに接続する。エレクトロニクスとフォトニクスのこの層化は、伝送パスを短くし、光品質に関わる損失を減らす。エレクトロニクスとフォトニクスは単一基板上に実装されるので、研究者はこのアプローチを「モノリシック共集積」と表現する。

過去20年、フォトニックチップが電子チップよりも非常に大きいため、そのモノリシックアプローチは失敗してきた。Juerg Leutholdによると、このためにシングルチップに統合することができなかった。フォトニック素子のサイズのために、それらを今日のエレクトロニクスで普及しているCMOS技術と統合することは不可能である。

プラズモニクス、半導体チップのマジックオプション
 「われわれは、フォトニクスをプラズモニクスで置き換えることでフォトニクスとエレクトロニクスの大きさの違いを克服した」とLeutholdは言う。10年間、研究者は、フォトニクスの1分野、プラズモニクスが超高速チップの基盤になると予言していた。プラズモニクスを使って光波を、光波長よりも遙かに小さな構造に圧縮することができる。

プラズモニックチップは、電子チップよりも小さいので、光層と電子層の両方を含む、一段とコンパクトなモノリシックチップの製造が実際に可能である。次に、電気信号をさらに高速な光信号に変換するために、フォトニック層はプラズモン強度変調器を含んでいる。これは、一段と高速にするために光を導く金属構造に基づいている。

統合して記録的なスピード
 これは、電子層の増速にとどまらない。“4:1 多重化”として知られる、4つの低速入力信号を束ねて増幅する。これは、まとめてそれらを高速電気信号とするためである。「次に、これを高速光信号に変える。このようにしてわれわれはモノリシックチップで初めて100Gbpsを超える速度でデータを転送することができた」とKochは説明している。

この記録破りのスピードにするために研究チームはプラズモンを古典的なCMOSエレクトロニクスだけでなく、もっと高速のBiCMOS技術と組み合わせた。また、ワシントン大学の新しい温度安定、電気光学材料を利用し、Horizon 2020 プロジェクトPLASMOfab とplaCMOSの洞察も利用した。Leutholdによると、実験はこれらの技術を統合することで最速コンパクトチップの一つを作ることができる。「そのソリューションは、将来の光通信ネットワークでより高速なデータ伝送に道を開くと確信している」と同氏は話している。

(詳細は、https://ethz.ch)