July, 28, 2020, 沖縄--沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、効率と安定性の高い次世代型太陽電池モジュールを開発した。ペロブスカイト材料を使用して作られた今回の太陽電池モジュールは、その高い性能を2000時間以上も維持することができる。研究結果は、主要学術誌であるNature Energyに掲載された。
ペロブスカイトは、ソーラーテクノロジー産業に革命を起こす可能性がある材料。その柔軟性と軽量性により、現在市場を独占している、重たくて硬いシリコンベースのソーラー発電パネルよりも多様な用途に使われることが期待できる。しかしペロブスカイトの商品化については、いくつかの高いハードルを乗り越えなければならない。
「ペロブスカイトがクリアせねばならない条件は3つ。製造コストが安いこと、効率が高いこと、そして長寿命」と、研究リーダー、OISTエネルギー材料と表面科学ユニットのヤビン・チー教授は説明している。
デバイス層を構築
OIST技術開発イノベーションセンターによるPOC(概念実証)プログラムの支援を受けているチー教授の研究チームは、新たなアプローチを使用し、安定性と効率の問題に取り組んだ。ペロブスカイトの太陽電池デバイスは多くの層で構成されており、各層には特定の機能がある。今回の研究では、1つの層だけに焦点を当てるのではなく、デバイスの全体的なパフォーマンスと、各層がいかに相互作用するかを研究した。
日光を吸収する活性ペロブスカイト層は、他の層に挟まれたデバイスの中央に位置する。光子がペロブスカイト層に当たると、負に帯電した電子がエネルギーを利用してより高いエネルギーレベルの層に飛び出すため、電子があった場所には、正に帯電した正孔が残る。これらの電荷は、活性を持つペロブスカイト層の上下にある層、すなわち反対方向にある電子層と正孔輸送層に向かう。これにより、電極を介してデバイスから遠のくように電荷が移動し、電気が流れる。今回のデバイスは劣化を減らし、有毒な化学物質が環境に漏れるのを防ぐ保護層により内包されている。
この研究では、22.4 cm2の太陽電池モジュールを使用した。
チームはまず、2層間にEDTAKと呼ばれる化学物質を追加することにより、ペロブスカイト活性層と電子輸送層の界面を改善した。すると、EDTAKが酸化スズ電子輸送層とペロブスカイト活性層とが反応するのを防ぎ、太陽電池モジュールの安定性を向上させることを発見した。
効率についても、EDTAKは2つの点において改善した。まずEDTAK内のカリウムが、活性ペロブスカイト層に移動し、ペロブスカイト表面の小さな欠陥を「修復」する。これにより、今までのように表面の欠陥が、移動中の電子と正孔をトラップしてしまうのを防ぎ、より多くの電気を生成できるようにった。またEDTAKは、酸化スズ電子輸送層の導電性を強化することにより、パフォーマンスを向上させ、ペロブスカイト層から電子が収集されやすくなった。
(詳細は、https://www.oist.jp)