July, 15, 2020, 和光--理化学研究所(理研)光量子工学研究センターアト秒科学研究チームのリン・ユーチー研究員、鍋川康夫専任研究員、緑川克美チームリーダーの研究チームは、一波長励起の増幅器を用いて、「サブサイクル光」と呼ばれる光電場が振動する周期よりも短い時間幅の極超短パルスレーザ光を簡便に増幅する新たな手法を開発した。
研究成果は、化学反応における電子の動きや強い光電場下での固体の状態変化など、物質の超高速応答を観測・制御する有力な手段を提供するものと期待できる。
サブサイクル光を増幅するには、1オクターブ以上の光周波数帯域での利得(入力に対する出力比)が必要。しかし、従来の光学パラメトリック増幅(OPA)では、ここまで広い利得周波数帯域幅を得られなかった。
今回、研究チームは、非線形光学結晶BBOを用いたOPAにおいて、励起光の波長を708nmにすることで、利得周波数帯域幅を1オクターブ以上に広げることに成功した。増幅した広帯域光を周波数に応じて重ね合わせる(分散補償)ために、波長分割と合成のための干渉計を二つの分散制御装置と組み合わせた。その結果、光周波数130~300THz(波長0.9~2.4μm:1μmは100万分の1m)にわたる短波長赤外領域のレーザ光の増幅と分散制御が可能になった。パルス幅が4.3フェムト秒(fs)であることから、得られた出力光がサブサイクル光であることを確認した。
研究成果は、オンライン科学雑誌『Nature Communications』に掲載された。
(詳細は、https://www.riken.jp)