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精密スプレイコーティングにより太陽電池の性能と安定性向上

June, 30, 2020, Washington--ペロブスカイトは、ほとんどの現在の太陽電池製造に使用されているシリコンの有望な代替であるが、それらを商用生産向けに実用化するには新しい製造プロセスが必要である。このギャップを埋めるのに役立てるために、研究者は新しい精密スプレイコーティング法を開発した。これにより、一段と複雑なペロブスカイト太陽電池設計が可能になり、量産に向けて拡大できる。

ペロブスカイトは、次世代太陽電池として有望である。それらは、シリコンと比べると効率よく光を吸収してエネルギーに変換し、潜在的な製造コストが安いからである。ペロブスカイトは、ガラスにスプレイしてエネルギー製造ウインドウを造ることができる。

「われわれの研究成果は、制御可能な厚さ、各レイヤ―の堆積率を制御してレイヤーごとにペロブスカイトを堆積させるプロセスを実証している。この新方法により、優れた性能と安定性のある太陽電池のスタックされた設計が可能になる」と研究チームリーダー、Pongsakorn Kanjanaboosは説明している。同氏は、タイのMahidol University科学学部。

Optical Materials Expressで、研究チームは、新しいスプレイコーティング法、逐次スプレイ堆積が、多層ペロブスカイト設計作製に利用できることを示している。各層に異なるペロブスカイト材料を適用することで、デバイスの機能のカスタマイズ、特殊な性能や安定要求に応えることが可能になる。

スプレイ法
ペロブスカイトの利点の一つは、それが溶液処理できることである。つまり、太陽電池は、液体ペロブスカイトを低い温度で固体に乾燥させることで作られる。この製法は、従来のシリコン太陽電池製造よりもはるかに容易で、安価になる。シリコン太陽電池は、高温を必要とし、固体材料をウエファに切断する必要がある。

しかし、ペロブスカイト作製に一般に用いられる溶液処理は、多層設計はできない。上の層が、すでに乾いた下層を溶解する傾向があるからだ。この問題の対処に研究チームは、材料の小滴が表面に供給される、逐次スプレイ堆積として知られるプロセスを利用することにした。

様々なスプレイコーティング法を試した後、チームは100℃付近で有効なものを見つけた。次に、微小滴が、すでに乾いた下層に触れるとすぐに乾いて固体ペロブスカイトに確実に結晶化するようにスプレイパラメタを最適化した。

多層デバイスの作製
「われわれのスプレイコーティングプロセスで、上層の溶液は、最初の層を形成している固体膜を乱すことはない。任意の数の層でスタックされたペロブスカイトアーキテクチャの無限の組み合わせを設計し、層ごとに厚さや堆積レートを正確に制御することができる」とPongsakornは説明している。

研究チームは、優れた電気的特性を持つ多様なペロブスカイト材料上に高安定のペロブスカイト材料を堆積することで、その技術を実証した。この二重層半透明ペロブスカイト材料は、明確に定義された層を示しており、同時に高性能と優れた安定性を達成した。

研究チームは、その新しいアプローチを利用して多層ペロブスカイトデバイスを作製する計画である。これは、以前には可能でなかった新しい機能と性能と安定性の組み合わせを持つデバイスである。