May, 27, 2014, Tokyo--日本電信電話(NTT)は、フォトニック結晶を用いた光ナノ共振器をベースとする超小型光メモリをチップ内に集積することにより、世界で初めて100ビットを超える光ランダムアクセスメモリ(RAM)を実現した。
この成果により、高速な光信号を電気に変換せずに高度な情報処理を行うことが可能となり、情報通信技術(ICT)の高速化、低消費エネルギー化が期待される。
「ナノフォトニクスセンタ」(NPC)は、今回、超小型の光メモリを集積動作させるために波長多重方式を採用し、同方式に適した新しい超小型光ナノ共振器構造を開発することによって、世界で初めて100ビットを超える光RAMの集積に成功した(NPCは、NTTにおいて、極微細加工技術を用いて大規模光集積及び光情報処理の極低消費エネルギー化に関する研究開発を行っている)。
これまでの光メモリは最大でも4ビットどまりであり、今回の100ビットを超える光RAMの実現は本格的な大規模光RAMの実現に向けた大きな進展であり、光情報処理用の実用的な光RAMの実現に大きく近いた。また、このようなミクロンスケールの光デバイスを100個を超えるレベルで高密度に集積できたのはメモリに限らなくとも初めてのことであり、光集積技術が、トランジスタ等の電子デバイスと同じように大規模に集積できる可能性を示す結果としても大きな意義がある。
今回、実現した光メモリは、1本の入出力用光導波路の横に動作波長の異なる多数個の光メモリが直列に集積されており、入力する光信号波長を選択することによって各メモリビットにランダムに書き込み、読み出しが可能となる。この成果では、高度な波長精度を有するナノ加工技術を用いて、シリコンを母材としたフォトニック結晶中に共振波長がわずかずつ異なる100個以上の光ナノ共振器を集積して作製することにより、この構成を実現した。強い光閉じ込め作用により、光は各共振器中のわずか0.1立方ミクロン以下の体積の領域に閉じ込められており、共振器はほぼ8µm間隔で高密度に並べられている。その結果、最大で105個の集積光メモリが独立に動作することを確認した。
技術のポイント
(1)波長多重集積に適したナノ共振器構造の採用
光メモリを直列に集積し、各ビットを個別の波長でランダムに呼び出すためには、各ビット間の波長の重なりを避ける必要がある。そのためには、狭い共振幅を持ち、単一の共振モードを持つ共振器が必要となるが、従来の光ナノ共振器ではこの特性を満たすことが難しかったため、6個の穴位置を3つのパラメータを用いて最適化した独自の共振器構造を考案した。この共振器中で光はわずか0.1立方ミクロン以下の小さな体積の中に閉じ込められており、メモリの超小型化も同時に達成されている。
(2)高精度な波長多重集積技術
各波長を独立に動かすためには、設計上の波長だけでなく、作製した共振器の波長精度が問題となる。NPCでは高度な電子線リソグラフィ技術と半導体微細加工技術を用いてフォトニック結晶を作製することにより、高い波長精度を実現した。全ビットの波長は、ほぼ設計通りに実現しており、波長の統計的なばらつきは小さく抑えられている。
この研究成果は、2014年5月25日に英国科学雑誌「ネイチャー・フォトニクス」のオンライン速報版で公開。
(詳細は、www.ntt.co.jp)