June, 24, 2020, 静岡--静岡大学 大学院総合科学技術研究科の成川礼 講師(グリーン科学技術研究所 兼任)、伏見圭司特任助教らは、酸素を発生して光合成(酸素発生型光合成)を行う微生物のシアノバクテリアより、橙色光と緑色光を感知する新しいシアノバクテリオクロムの発見に成功した。
シアノバクテリオクロムはシアノバクテリアが持つ色素たんぱく質であり、様々な波長の光を感知する光受容体として知られている。研究チームは、昨年、橙色光と遠赤色光を感知するシアノバクテリオクロムの分子構造を解明した。今回、多様なシアノバクテリオクロムの配列と構造と比較することで、青色光、青緑色光、緑色光、黄緑色光、黄色光、橙色光を感知するために重要となる、分子の進化に関わるアミノ酸を同定した。その情報を基にシアノバクテリオクロムの人工的な改変を試みた結果、青色光から橙色光までの可視光を感知する7種類の改変体を作り出すことに成功した。さらに、これらのたんぱく質と細胞内シグナル誘導たんぱく質を連結した人工酵素を作り、シアノバクテリオクロムのたんぱく質部分で光を感知して、細胞内シグナル誘導たんぱく質部分の活性を制御できる、光スイッチとして働くことを立証した。
今後、この研究成果で得られた分子を技術基盤とすることで、多彩な色の光で制御・観察できる光スイッチや蛍光プローブの開発が期待できる。なお、この研究は米国カリフォルニア大学デービス校の研究チームとの共同研究によって行われた。
研究成果は、2020年6月22日(米国東部時間)に米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaオンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.shizuoka.ac.jp)