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海洋プラスチック粒子連続モニタリングの基盤となる光技術

June, 23, 2020, 東京--海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球環境部門地球表層システム研究センターの朱春茂研究員らは、ハイパースペクトル画像診断(Hyperspectral Imaging, HSI)技術を用いたマイクロプラスチックの高速な検出分類手法を確立した。

マイクロプラスチックと呼ばれる大きさ5 mm以下の微小なプラスチック粒子は、生物に摂取されるなど海洋生態系へ負の影響を与えていることが知られ、国際的な関心が高まっている。しかし、従来の計測はニューストンネットで採集した粒状試料を顕微鏡などを用いてマイクロプラスチックを一粒ずつ拾い出して材質分析するのが一般的で、時間と手間がかかる上、ネットの目を通り抜ける300 µm以下の微小サイズの粒子については計測があまりなされていなかった。

研究チームは、プラスチック材料が素材ごとに固有の分光反射特性を持つ性質に着目して、HSI技術に基づいた、マイクロプラスチックの高速な検出分類手法を開発した。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等11種類の身近なプラスチック素材について、近赤外波長での反射スペクトルを明らかにし、そのパターンとの類似性に基づいて、100 µmまでの微小なプラスチック粒子を検出し、材質を識別することに成功した。また、微小な粒子の検出には、ろ過フィルターとしても役割を果たす金粒子を蒸着したメンブレンフィルタ(金コートフィルタ)上で画像解析を行うことが有利であることを見出した。金コートフィルタは100 µmサイズの粒子も十分に捕集が可能で、300 µm以下の粒子まで、高速かつ自動的に各種プラスチック粒子を検出分類できる見通しを得ることができた。

研究成果は、エルゼビア社の科学誌「Environmental Pollution」オンライン版に掲載された。
(詳細は、http://www.jamstec.go.jp)