June, 8, 2020, 名古屋--名古屋大学大学院医学系研究科 総合保健学専攻の 山本誠一 教授を含む県Qグループは、粒子線がん治療に用いる炭素線を照射したときに生じる即発X線画像に対して、深層学習(ディープラーニング)を用いることにより、正確な線量画像を生成することに成功した。
患者に入射した粒子線がん治療ビームの飛跡を治療中にモニタリングすることは、ビームが患者の腫瘍に正しく照射されていることを確認するために、粒子線治療の現場で切望されている。これまでに研究グループが開発してきた放射線画像化装置を用いた即発X線撮像法は、炭素線の飛跡を画像化できる画期的な手法だが、得られた画像は実際の線量画像と一致しないという問題点があった。この問題点を解決するために、今回、日本、米国、台湾の研究者が協力し、深層学習(DL)を用いて、ビームの飛跡から正確な線量画像を生成することを試みた。量研が計算で即発X線画像と線量画像を高速に作成する方法を考案し、作成した大量の学習用データを、UC Davisが提案した深層学習アーキテクチャに学習させた結果、高い空間分解能で、かつ鮮明な線量画像を生成することに成功した。
今回の成果は、即発X線画像化法に深層学習を組み合わせることにより、飛程のみならず線量分布を得ることが可能であることを示した。研究グループは、今後、さらに最適化を図り、放射線画像化装置に組み込み、治療現場への普及を目指している。
研究成果は米国医学物理学専門誌であるMedical Physics誌に掲載された。
(詳細は、https://www.qst.go.jp/)
研究グループ
名古屋大学大学院医学系研究科 総合保健学専攻の 山本誠一 教授、矢部卓也 大学院生、量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所の 山口充孝 主幹研究員、河地有木 プロジェクトリーダー、兵庫県立粒子線医療センターの 赤城卓博士、University of California, Davisの Chih-Chieh Liu博士、国立台湾大学のHsuan-Ming Huang教授。