June, 1, 2020, 徳島--徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所の安井武史教授と、中国、フランスの研究者を含む国際共同研究グループは、テラヘルツ・コムに基づいたガス分光で高精度性と汎用性を両立する技術の開発に成功した。
テラヘルツ波は極性ガス分子の回転運動による吸収が現れる周波数領域に位置し、各種の揮発性有機化合物ガスがこの周波数領域で特徴的な吸収スペクトルを示すことから、揮発性有機化合物ガスの分光分析手段として期待されている。特に、極めて正確で精緻な櫛の歯状スペクトルを持つテラヘルツ・コムを用いた分光法(デュアル・テラヘルツ・コム分光法は、高い分光精度(高確度、高分解能、広帯域)を備えているが、テラヘルツ・コムの発生及び検出のためには周波数安定化制御された特殊なレーザを2台利用する必要があり、光源部が複雑・高価格であるために汎用性を損ねていた。一方、デュアル光コムファイバレーザは、1台のレーザで2つの光コムを発生させることが可能である上、周波数安定化制御が不要であるため、光源部の簡素化・低価格化を可能にするが、レーザ非制御による周波数揺らぎのため、デュアル・テラヘルツ・コム分光法の高い分光精度を犠牲にしなければならなかった。
これらの課題を解決するため、研究グループは、デュアル光コムファイバレーザとアダプティブ・サンプリング法を融合したデュアル・テラヘルツ・コム分光装置を開発した。この分光装置では、デュアル光コムファイバレーザの周波数揺らぎを検出し、その揺らぎに基づいてスペクトル波形の歪みを補正することにより、分光精度の低下を防ぐ。この手法により、高い分光精度と汎用性を兼ね備えたデュアル・テラヘルツ・コム分光法が可能になり、大気環境汚染のモニタリングに役立つと期待される。
研究成果は、International Society for Optics and Photonics電子ジャーナル「Advanced Photonics」で公開された。
(詳細は、https://www.tokushima-u.ac.jp/)
研究グループ
徳島大学 安井武史教授、南川丈夫准教授、水野孝彦特任助教、陈杰(チェン ジェ)元特別研究生、新田一樹元博士前期課程学生らと、北京航空航天大学(中国)の郑铮(ヂォン ヂォン) 教授、リトラル・コート・ド・パール大学(フランス)のフランシス・ヒンデル教授