May, 27, 2020, 和光--理化学研究所(理研)光量子工学研究センターアト秒科学研究チームの付 玉喜(フ・ユーシー)特別研究員(研究当時)、西村光太郎大学院生リサーチ・アソシエイト、高橋栄治専任研究員らの国際共同研究グループは、「高次高調波発生」と呼ばれるレーザ波長変換法を用いて、「水の窓(波長2.28~4.36nm)」域のアト秒パルスX線を高効率かつ高強度で発生させる手法を確立した。この手法により、光子エネルギー300eV域においてナノジュール級の出力を持つコヒーレント軟X線(波長0.1~10nm、光子エネルギー100~10000eV程度の範囲)光源の開発に成功した。
研究成果は、ギガワット(GW)級のピーク出力を持つ軟X線アト秒レーザの開発につながると期待できる。
今回、国際共同研究グループは、波長可変かつテラワット級のピークパワーを持つ「中赤外フェムト秒レーザ」に、理研独自の高次高調波エネルギースケーリング法を組み合わせることで、「水の窓」と呼ばれる生体観測に有用なX線波長域において、高次高調波パルスエネルギーを従来よりも約1,000倍高出力化することに成功した。この高出力化法は、高い発生効率を保ったままで高調波の出力エネルギーを増加できるという点で優れている。さらに、開発したコヒーレント軟X線光源を用いて、化学状態分析法である吸収端近傍X線吸収端微細構造(NEXAFS)の計測にも成功した。
研究成果は、『Communications Physics』に掲載された。
(詳細は、https://www.riken.jp)