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テラヘルツ波の新しいトランスミッタ開発

May, 18, 2020, Dresden--テラヘルツ波は科学や技術でますます重要になってきている。テラヘルツ波により未来材料の特性を明らかにし、自動車塗料の品質やスクリーンエンベロープの品質をテストすることができる。しかし、テラヘルツ波の生成は、まだ難しい。
 Helmholtz-Zentrum Dresden-Rossendorf (HZDR)、TU Dresden およびUniversity of Konstanzの研究チームは、大きな前進を達成した。研究チームは、有利な特性を持つ短いTHzパルスを生成するゲルマニウムコンポーネントを開発した。パルスは、非常に広帯域スペクトルであり、同時に多くの異なるTHz周波数を供給する。半導体産業ですでに使われている方法を利用してそのコンポーネントを製造できるので、この開発により研究と技術に広範なアプリケーションが有望視されている。研究成果は、Light: Science & Applicationsに発表された。

テラヘルツトランスミッタの確立された製法の一つはGaAs結晶ベースである。この半導体結晶を短パルスレーザで照射すると、GaAs電荷が形成される。この電荷が、電圧を印加することで加速され、これによってTHz波の生成が強化される、基本的に動く電荷がRFsを生成するVHFトランスミッタマストと同じメカニズムである。

しかし、この方法には多くの欠点がある。HZDR物理学者Dr. Harald Schneider.は「比較的高価な特殊レーザでしか動作しない。光ファイバ通信でわれわれが使用する種類の標準的なレーザでは、機能しない」と指摘する。もう一つの短所は、GaAs結晶からは比較的狭いTHzパルスしか得られないので周波数範囲が限られる、つまり、アプリケーション範囲が大幅に制限されることである。

貴金属インプラント
Schneiderのチームが別の材料、半導体ゲルマニウムに賭けたのはそういう理由である。「ゲルマニウムでわれわれは、ファイバレーザとして知られる比較的高価でないレーザを使える。それにゲルマニウム結晶は非常に透明度が高く、したがって広帯域パルス出力が容易になる」と同氏は話している。「しかし、これまでのところ、問題があった。レーザ短パルスでピュアゲルマニウムを照射するとその半導体の電荷が消えるまでに数マイクロ秒(µs)かかる。その結晶が次のレーザパルスを吸収できるのは、それからである。しかし、今日のレーザは、数十ナノ秒の間隔でパルスを発する、ゲルマニウムにとって、一連のショットはあまりにも速すぎる。

この問題を克服するために、エキスパートは、ゲルマニウムの電荷をもっと速く消す方法を探した。答は、有名な貴金属、金に見つかった。「われわれはイオン加速器を使って金原子をゲルマニウム結晶に打ち込んだ。金は、100 nmの深さまでその結晶を貫いた」(Dr. Abhishek Singh)。次にその結晶を900℃で数時間加熱した。熱処理により、金原子がゲルマニウム結晶に確実に均等分布する。

チームがレーザ短パルスでゲルマニウムを照射したとき、成功が始まった。電荷は、結晶に数マイクロ秒とどまるのではなく、2ナノ秒(ns)以下で再び消えた。以前より約1000倍速かった。たとえて言うなら、金はトラップのように機能し、電荷を捉えて無効にするのに役立っている。「ゲルマニウム結晶は、高繰り返しレートでレーザパルスを受け、それでもなお機能している」。

安価な製造が可能
その新しい方法により非常に広帯域のTHzパルスが容易に生成できる。確立されたGaAs技術を使った7 THzではなく、10倍大きな70THzである。「われわれは、突然、広い連続的なギャップのないスペクトルを手に入れた。つまり実に多用途の光源を獲得しており、非常に多様なアプリケーションに使うことができる」(Schneider)。もう1つの利点は、ゲルマニウムコンポーネントが、マイクロチップで使われる同じ技術で効果的に加工できることである。「GaAsと違い、ゲルマニウムはシリコンに適合的である。その新しいコンポーネントは、標準ファイバオプティックレーザとともに動作可能なので、非常にコンパクトで安価な技術を作れる」(Schneider)。

このことは、金ドープゲルマニウムが、科学的応用だけでなく、興味深いオプションになると言うことである。例えば、グラフェンのような画期的な2D材料の詳細な分析である。さらに医療や環境技術にも適用できる。例えば、THzスペクトルで大気中のあるガスを追跡するようなセンサが考えられる。Dresden-Rossendorfで開発された新しい方法は、将来、このように安価な環境センサ実現に役立つ。