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蝶の翅のナノ構造と生細胞をヒントに放射冷却材料

April, 17, 2020, New York--コロンビア大学のエンジニアとハーバード大学の生物学者は、蝶が翅の生きた部分を保護するために行動と翅の鱗粉を特殊化していることを発見した。翅の鱗粉に見つかったナノ構造は、過度の熱条件管理に役立つ、放射冷却材料の設計のヒントになる。また、翅の感覚網は先進的飛行装置設計のヒントになる。

コロンビアエンジニアリングとハーバード大学の新たな研究が、蝶の翅が機能する適切な温度の生理学的な重要性を特定し、蝶が構造的、行動的適応の両方で翅の温度を絶妙に規制していることを発見した。

蝶の翅は主に生命のない膜組織でできているという通念に反して、その新しい研究は、蝶の翅が生きた細胞を含むことを実証した。その機能は、適切なパフォーマンスには限られた範囲の温度を必要とする。その小さな熱容量を考慮すると、翅は陽光の中では急速にオーバーヒートして蝶は飛行を止める、また寒い環境での飛行では冷えすぎる。研究成果は、Nature Communicationsに発表された。これは蝶の翅構造と挙動を形成する温度を示唆する初の研究である。

「蝶の翅は本質的に、蝶が太陽光の強さと方向を正確に判断できるベクトル光検出パネルであり、眼を使わずに迅速にこれを行う」と応用物理学准教授、Nanfang Yuは説明している。

研究チームは、生物学と光学の専門技術を使い多くの重要な発見をした。翅の鱗粉を慎重に除去して翅の内部を詳しく調べ、翅内に見つかったニューロンを染色することで、蝶の翅に機械的センサと温度センサが詰まっていることを確認した。翅の生きた組織は、ヒメアカタテハの場合、3週間以上、成蝶の寿命を通して循環系気管系によって活発に供給されている。

1分当たり数10回鼓動する「翅の心臓」も発見した。これは、ある種の蝶の翅にある「嗅覚パッド」、つまり発香器官を通して蝶の血液、血リンパの方向流を促進する。

「蝶の翅についてのほとんどの研究は、個体間の信号に利用される色に焦点を当てていた」とPierceは言う。「この研究は、蝶の翅を、比較的不活性な膜というより、動的、生きた構造として再度概念形成する必要があることを示している。翅に観察されたパタンは、翅の生きた部分の温度を調整する必要性により、重要な方法でも形成されている可能性もある」。

Yuの研究室は、赤外ハイパースペクトルイメージングに基づいた非侵襲的技術を設計した。画像の各ピクセルが一つの赤外スペクトルを現しており、それによって研究者は初めて、蝶の翅の温度分布を正確に計測できた。「これは、これまでは実行が困難だった。蝶の翅が薄く、繊細だからである」とPierceは話している。

「このイメージング技術によりわれわれは、翅の外観をその熱力学的特性から分離して物理的適応性を研究することができる。様々な規模のナノ構造と非均一な表皮の厚さが、放射冷却、熱放射による放熱の不均質な分布を造ることを発見した。これは、翅の血管や嗅覚パッドなど、生きた構造の温度を選択的に下げる」。

熱放射のこの局所的、選択的強化の効果は、蝶の翅に関するチームの熱力学的実験で十分に証明された。蝶の自然環境を模擬した実験条件は、Yuの研究室で作られ、研究チームは翅の感度に対するいくつかの環境要素の相対的寄与を定量化することができた。これらに含まれるのは、陽光の強さ、地上環境の温度、それに空の「寒さ」である。空の寒さは、過熱した翅からの熱放射の効率的ヒートシンクとして機能する。チームは、全てのシミュレートされた環境条件で、様々な外観的な色やパタンにも関わらず、生きた細胞(翅の血管と嗅覚パッド)を含む蝶の翅のエリアが、強化された放射冷却により、「生命のない」翅の部分よりも常に温度が低いことを確認した。

論文の主筆、YuグループのPh.D学生、Cheng-Chia Tsaiは、「翅の鱗粉に見つかったナノ構造は、過度の熱条件に対処する放射冷却材料の設計を示唆するものである」と指摘している。

研究チームは、認められている7の蝶ファミリの6から生きた蝶の一連の行動研究を実施した。目的は、翅に当てたシミュレートされた陽光に対する反応を調べることである。チームは、蝶がその翅を使って、温かさとオーバーヒートの主因である太陽光の方向と強度を感知することを見出した。また、翅のオーバーヒートあるいは過冷却を防ぐために特殊な行動で反応することも見いだした。例えば、調べた全ての蝶は、CAFE4qewgieZwek 「トリガー」温度、約40℃を示し、小さな光スポットの照射により翅がオーバーヒートするのを数秒で回避する。

YuとPierceは現在、ハーバードの比較動物学ミュージアムの鱗翅目の大規模な系統的光学研究を行っている。これらは、全系統樹の数100の蝶種の個別種数千を含み、各々の種がUVから中赤外で撮られた完全ハイパースペクトルイメージングデータを持つ。

「蝶の各翅は、リアルタイムフィードバックを行う数10の機械的センサを備えており、これにより複雑な飛行パタンが可能になっている。これは、飛行装置の翼の設計に対するインスピレーションである。おそらく翼の設計は、航空力学的考慮に基づくだけではなく、集積されたセンサ-機械的システムとして設計された翼が複雑な空力条件で飛行物体の性能を高めるのである」とコメントしている。
(詳細は、https://engineering.columbia.edu)