Science/Research 詳細

超高精度光周波数の240kmファイバ伝送に成功

March, 19, 2020, 東京--日本電信電話株式会社(NTT)と東京大学(東大)大学院工学系研究科香取秀俊教授(理化学研究所光量子工学研究センターチームリーダー、同開拓研究本部主任研究員)及び東日本電信電話株式会社(NTT東)は、複数の遠隔地間で240kmに及ぶ光周波数ファイバ伝送の実証実験を実施し、データ積算時間2600秒で、周波数精度1×10-18に達する超高精度光周波数遠隔地間伝送に成功した。
 この結果は、現在、世界最高性能の光格子時計の有する光周波数を、その性能を保ったまま、光ファイバで200kmを超える伝送が可能であることを示している。
 光格子時計は、セシウム原子時計を桁違いに上回る超高精度な原子時計。光格子時計の驚異的な精度の高さを利用する応用の一つが、複数の遠隔地に設置した光格子時計を光ファイバで接続し、その周波数差を遠隔比較する「相対論的な効果を使った標高差測定(相対論的測地)」。それにより、重力ポテンシャル計測に基づく精度1cmレベルの水準点や、地震や噴火の前兆現象につながるわずかな地殻変動の日常監視など、新たなインフラストラクチャへの展開が期待されている。
 この研究において、NTTとNTT東日本は、世界で初めて、平面光波回路(PLC)技術を用いた光周波数中継装置(リピーター)を開発し、このリピーターをカスケード接続した超高精度光周波数ファイバ伝送網を構築した。構築したファイバ網に超狭線幅レーザを伝送させ、伝送精度を評価することにより、1cm精度の標高差比較が可能な1×10-18という周波数の精度を保ったまま、200km級の遠隔地間へと伝送距離を拡張することを実証した。この周波数伝送精度は、東大・理研が開発した世界最高精度の光格子時計を用いた遠隔地間周波数比較による相対論的測地が可能なレベルである。
 研究成果は、Optics Expressに公開された。
 
(詳細は、https://www.ntt.co.jp)