March, 16, 2020, Hoboken--スティーブンス技術研究所(Stevens Institute of Technology)の研究チームは、光の量子特性を利用して現行技術よりも40000倍鮮明な画像を作る3Dイメージングシステムを開発した。これは、自動運転車ではこれまでにないLiDARセンシングと検出、サテライトマッピングシステム、深宇宙通信、人の網膜の医療イメージングに道を開く。
スティーブンスの量子科学・工学センタのディレクタ、Yuping Huangをリーダーとする研究は、LiDARの10年来の問題に対処する。LiDARは、遠くのターゲットにレーザを照射し、反射光を検出する。これらのシステムで用いられる光検出器は、情報がエンコードされた光粒子、わずか数フォトンから詳細な画像を創るだけの感度があるが、太陽など、もっと明るい背景光からレーザ光の反射光を区別するのは難しい。
「われわれのセンサがもっと高感度になればなるほど、センサはますます背景ノイズに対しても高感度になる。それが、現在、われわれが解決しようとしている問題である」とNature Communicationsに発表された論文で、Huangは説明している。
その技術は、Quantum Parametric Mode Sorting(QPMS)法を使うシングルフォトンノイズ低減を初めて実世界で実証したものである。QPMSは、2017 Nature論文でHuangとそのチームが初めて提案した。ほとんどのノイズフィルタリングツールは、ソフトウエアベースの後処理に依存してノイズ画像をきれいにするが、これらと異なり、QPMSは、新しい非線形オプティクスにより光の量子シグネチャを調べ、センサそのもののレベルで飛躍的に鮮明な画像を生成する。
バックグラウンドノイズの轟音に囲まれた、特殊情報を持つフォトンを検出することは、猛吹雪から1個の雪片を取り出そうとするようなものである。しかし、それが正しくHuangのチームがやろうとしたことである。研究チームは、出て行くレーザ光パルスに特殊な量子特性を刻み込み、次に入ってくる光をフィルタリングする方法を説明している。これは、適合する量子特性を持つフォトンのみをセンサで記録するためである。
結果は、そのターゲットから戻ってくるフォトンに信じられないほど敏感なイメージングシステムである。しかし、それは実質的に全ての不要な雑音フォトンを無視する。チームのアプローチは、全ての信号を運ぶフォトンが34倍の多数の雑音の多いフォトンに埋もれていたとしても、鮮明な3D画像を生み出す。
「最初のフォトン検出をきれいにすることでわれわれは、ノイズの多い環境で正確な3Dイメージングの限界を押し広げつつある。われわれは、現在最高のイメージング技術と比較して約40000倍のノイズ量を減らすことが可能であることを示した」と論文の筆頭著者、博士課程候補、Patrick Rehainは説明している。
ハードウエアベースのアプローチは、計算集約的な後処理が可能でないノイズの多い設定でLiDARの利用を容易にする。その技術は、ソフトウエアベースのノイズ低減と組み合わせて、さらに優れた結果を出すことも可能である。「われわれはコンピュータアプローチと競いあおうとしているが、そのアプローチに取り込む新しいプラットフォームを提供しようともしている」とRehainは話している。
実用面では、QPMSノイズ低減によりLiDARは、30kmまでの範囲で正確で詳細な3D画像を生成するために使える。また通常、太陽のギラつく光が、遠くのレーザパルスを消してしまうような、深宇宙通信でも使える。
恐らく最も素晴らしいことは、その技術によって研究者は、身体の最も敏感な部分をもっとよく見ることができるようになることである。実質的にノイズフリーシングルフォトンイメージングにより、Stevensイメージングシステムは、目の敏感な組織に損傷を与えないような非常に弱いレーザビームを使うことで、人の網膜の鮮明で、非常に詳細な画像を撮ることができる。
「シングルフォトンイメージング分野は、ブームである。しかし、ノイズ削減で、そのような大きな一歩をわれわれが踏み出してから長い時間が経過している。非常に多くの技術に、それが与える利点である」とHuangは話している。