February, 28, 2020, 三重--名城大学の赤﨑勇終身教授の研究グループの岩谷素顕准教授らは、三重大学、旭化成株式会社の共同研究により世界初の中波長紫外線(UVB波長領域)半導体レーザを発明した。
レーザ光はLEDや太陽光など自然界に存在する光とは異なり波長・位相が制御された究極的な光源であり、医療・工業・家電・情報通信・計測・フォトニクスなどさまざまな新しい産業・学問分野が創造されている。レーザ光を生み出す装置のうち、半導体レーザは小型・高効率・低消費電力など優れた性能を有していることから、レーザ光の社会実装に大きく貢献している。これまで赤外線・赤色・緑色・青色レーザが実用化され社会実装されており、より波長が短くエネルギーの大きな紫外線(UV)領域のレーザの実現が強く望まれていた。紫外線は長波長紫外線(UV-A:光の波長が380~320nm)、中波長紫外線(UV–B:320~280nm)、短波長紫外線(UV-C:280nm以下)の3種類に分類される。既に、名城大学や浜松ホトニクス㈱などのグループから長波長紫外線領域の半導体レーザが、旭化成㈱および名古屋大学のグループから短波長紫外線領域の半導体レーザの実現が報告されていた。今回の成果により、紫外線領域全域にわたって半導体レーザが実現できることが実証された。
中波長紫外線領域の半導体レーザが実現できない理由はその領域の高品質な結晶が得られないことに起因していた。グループでは、赤﨑勇終身教授が青色LEDの発明でノーベル賞を受賞した窒化物半導体を用いた。基板にはサファイア基板を用い、三重大学の三宅秀人教授が開発した高品質な窒化アルミニウム(AlN)テンプレート上に、赤﨑方式によって高品質かつ格子緩和した窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を開発した。これは長波長紫外線や短波長紫外線領域のレーザとは異なる方法であり、研究グループ独自の手法。さらに絶縁体に相当する同材料の大電流密度動作を達成し、未踏領域の半導体レーザを発明した。
紫外レーザは、医療・バイオサイエンス・化学・殺菌・工業用途など多くの分野での応用が期待できる。特に中波長紫外線は生体に対しての影響が大きいため、DNAシーケンサーや皮膚治療など他の波長域ではできないような新しい応用が期待できる。また、既存のガスレーザや固体レーザの紫外領域の市場が1000億円/年以上あるとされていることから、優れた特性を持つ半導体レーザでそれが実現できることから従来の市場価値に加えてイノベーションの創出が期待できる。
研究成果は、Applied Physics Expressiに掲載された。
(詳細は、https://www.jst.go.jp/)