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可変光共振器でトランスペアレンシーを制御

February, 10, 2020, Sunnyvale--量子の世界では、ある環境下、適切な干渉パタンで、光は不透明媒体を透過できる。

光のこの特性は、数学的トリックを超える。光量子メモリ、光ストレージ、1度にわずかなフォトンの相互作用に依存する他のシステム、いわゆる電子誘導透過(EIT)というプロセスに依存する。

既存および新しい量子技術と光学技術が役立つので、研究者は、外部の影響、例えばすでにデリケートなシステムを乱す追加フォトンを導入することなしでEITを操作する能力に関心をもっている。今回、セントルイスワシントン大学McKelvey工学の研究者は、透明性をON/OFFするために使用できる完全内包光共振器システムを考案した。これにより、幅広いアプリケーションに関連がある制御手段が可能になる。

研究成果は、Naturae Physicsに発表された。

光共振器システムは、電子共振回路に類似しているが、電子の代わりにフォトンを使う。共振器の形は様々であるが、それらは全て反射材料を取り込んでおり、一定時間光を捕らえて、光はその間、あるいは表面の周りで前後に跳びはねる。これらのコンポーネントは、レーザから高精度計測デバイスまで何にでも利用されている。

研究では、Lan Yang教授のチームは、ウィスパリング・ギャラリモード共振器(WGMR)として知られる共振器タイプを利用した。
 理想的なシステムでは、光ファイバラインはシリカ製のリング、共振器と接線で交差する。ラインのフォトンが共振器と出合うとき、急降下し、反射しリングに沿って伝搬し、最初に向かっていた同じ方向のファイバに入り込む。

しかし、現実は、滅多にそれほど巧妙にはならない。

「高品質共振器の製造は、完璧ではない。常に、何らかの欠陥、あるいはホコリがあり、その光を散乱させる」とYangは言う。実際に起こることは、散乱光の一部が方向を変え、共振器から出て、それが来た方向へ戻っていく。その散乱効果は、光を分散させ、また光はそのシステムから出て行かない。

システムの周りのボックスを考える。光が左からボックスに入る、次に右側から出るなら、そのボックスは透明に見える。しかし、入った光が散乱されて外に出ないと、そのボックスは不透明に見える。

共振器に不完全性を造ることは、一貫性がなく、予測できないので、したがって透明性も予測できなかった。そのようなシステムに入る光は散乱し、最終的には、その力を失う。つまり、共振器に吸収され、システムは不透明になる。

研究チームが考案したシステムでは、2つのWGMRsが、光ファイバで間接的に結合されている。第1共振器は高品質であり、不完全性はわずかに1つ。論文の筆頭著者、Changqing Wangは、ナノ粒子のように振る舞う微小な尖った材料を高品質共振器に加えた。その当座しのぎの粒子を動かすことで、Wangは、それを「調整」し、内部で光が散乱する仕方を制御することができた。

重要な点は、同氏が共振器を「除外点」として知られるものに調整することもできたこと、つまり除外点とは、唯一存在できる状態である。この場合、その状態は共振器内の光の方向、時計回りか反時計回りである。

実験には、研究チームは光を一対の関節結合共振器に左から向かわせた。光波は、最初の共振器に入り、光が確実に時計回りになるように「調整」された。光は周囲を跳ね回り、次に外に出て、ファイバを第2の低品質共振器に続けて伝搬した。

そこで、光は共振器の欠陥によって散乱され、その一部が周囲に沿って反時計回りに伝搬し始めた。その光波は、次にファイバに戻るが、第1の共振器に戻って行った。

決定的な点は、研究チームは、第1共振器のナノ粒子を光波を時計回りに動かすためにだけ利用したのではない。光波が2つの共振器間で行き来するので、それを調整して、特別な干渉パタンが形成されるようにもした。そのパタンの結果、共振器内の光は、相殺され、ファイバに沿って伝搬する光が透過し、システムが透明に見える。

電子誘導透過(EIT)の機能のもっと重要な、興味深い点は、「スローライト」を作れることである。光のスピードは常に一定であるが、その速度の実際の値は、光が透過する媒体の特性に基づいて変化する。真空で、光は常に30万km/sec進む。
 Wangによると、EITで、光の速度を8 m/sec以下にすることができた。「それは、光情報の蓄積に大きな影響を持つ。光の速度が落ちると、エンコードされた情報を光量子コンピューティング、あるい光通信に利用する十分な時間がある」。エンジニアが、EITを十分に制御できると、これらのアプリケーションのためにスローライトを高信頼に利用できる。

EITの操作は、長距離通信の開発でも利用できる。共振器を調整することは、同じファイバに沿って何kmも離れた別の共振器に間接的に結合できる。「その光ファイバで伝送される光をシフトダウンすることができる」とYangは言う。

これは、特に、量子暗号では極めて重要である。