January, 29, 2020, Wien--TU Wien研究チームは、複数の記録を破るテラヘルツ放射源の開発に成功した。光源は、極めて効率的であり、そのスペクトルは、非常に広く、全テラヘルツ域から様々な波長を生成する。これは、非常に高い放射強度で短パルス生成の可能性に道を開くものである。新しいテラヘルツ技術は、Nature Communicationsに発表された。
レーザとアンテナ間の「テラヘルツギャップ」
技術的視点で、テラヘルツ放射は、アクセスが非常に困難な周波数域にある。高い方の周波数は通常の固体レーザで生成できる。一方、低い周波数は、モバイル通信に利用されるが、それはアンテナで放射される。最大の課題は、テラヘルツ域の正に中間にある。
TU Wienレーザ研究所では、所望の高強度テラヘルツ放射パルスの生成に多大の努力が必要だった。「われわれの出発点は、赤外レーザシステムの放射である。それは、当研究所で開発された。世界的に類例がない」とClaudia Gollnerは言う。まず、そのレーザ光は、いわゆる非線形媒体を通して送出される。この材料内で赤外放射が偏光され、その一部が、2倍の周波数の放射に変換される。
「したがって、われわれは2つの異なるタイプの赤外放射を持つ。この2種類の放射は、次に重ね合わされる。これにより、非常に特殊な非対称形状の電界を持つ波が生まれる」とClaudia Gollnerは説明している。
空気をプラズマに変える
この電磁波は、空気中の分子から電子を奪い取る強さがある。空気は、光るプラズマに変わる。次に、その波の電界の特殊形状が、電子を加速し、所望のテラヘルツ放射生成となる。
「われわれの方法は、極めて効率的である。供給エネルギーの2.3%がテラヘルツ放射に変換される。それは、他の方法で達成できるよりも数桁大きい。これは、ほぼ200µJの飛躍的に高いTHzエネルギーである」(Claudia)。その新方法のもう1つの重要な利点は、テラヘルツ放射の非常に広いスペクトルが生成されることである。テラヘルツ域で、非常に多様な波長が同時に放出される。これは、非常に強い短放射パルスを生成する。異なるTHz波長のスペクトルが広ければ広いほど、ますます短く強いパルスが生成できる。
多くの可能なアプリケーション
「初めて、非常に高強度放射のテラヘルツ光源が利用できるようになった。テルル化亜鉛結晶を用いた最初の実験は、テラヘルツ放射が、全く新しい方法で材料科学からの重要な問題に極めて適切に答えられることを示している。この方法に素晴らしい未来があるとわれわれは確信している」とウィーン工科大学研究グループ長、Andrius Baltuskaはコメントしている。