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光共振ミラーにより化学反応を制御する新技術を開発

January, 28, 2020, 札幌--北海道大学電子科学研究所の平井健二准教授(科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者),雲林院宏教授,メルボルン大学化学科のジェームズ・ハチソン研究員らの研究グループは,光共振器の中で分子の振動状態を変えることで,化学反応をコントロールする方法を開発した。

2枚の反射ミラーが向かい合った光共振器の中では,ミラー間の距離に応じて,特定の波長の光が安定に存在できる。この光のエネルギーと分子振動のエネルギーが等しくなると,共振器と分子振動が光を介して強く相互作用する。この時,共振器中の場と分子振動が混成した状態(振動ポラリトン)を形成する。この量子的現象は以前から知られていたが,分子化学との接点はほとんどなく、化学反応への影響は未解明の領域だった。

研究では,光共振器の中で有機反応の反応速度が変化することを実証した。光共振器の中ではカルボニル基の伸縮振動と共振器が強く相互作用し,振動ポラリトンのエネルギー準位の分裂(ラビ分裂)を観測した。この状態では,カルボニル基の反応性が低下しており,反応速度が大きく減速することがわかった。この方法では,ミラー間の距離を調整するだけで,狙った反応部位が反応できなくなるため,保護剤を必要としない選択的化学反応に応用できる可能性がある。
 今後,新たな化学反応の操作方法として,機能性材料や医薬品などの合成プロセスへの展開が期待される。

研究成果は, Angewandte Chemie International Edition誌に掲載(オンライン公開)された。
(詳細は、https://www.jst.go.jp)