January, 22, 2020, 奈良--奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 情報科学領域 光メディアインタフェース研究室のArnaud Delmotte氏、向川康博教授、舩冨卓哉准教授、久保尋之助教、田中賢一郎助教のグループは、3Dプリンターで作成した立体的な造形物に密かに製品管理に必要な情報を埋め込み、その情報が必要な時にファックスのような読み取り装置であるドキュメントスキャナを使って取り出す技術を開発した。
造形物の形をほとんど変えず、製品番号などさまざまな情報を埋め込むことができるうえ、市販のスキャナで簡単にその情報を取り出せることから、実用的な電子透かし技術として、インターネットサービスとの連携や効率的な製品の製造・流通管理などへの応用が期待される。
3Dプリンターの主な方式の1つに、樹脂を熱で溶かしながら造形物の断面図に沿って積層する、熱溶解積層(FDM)方式があり、通常、厚みが一定な層を形成するように樹脂を吐出しながら造形する。今回、開発した技術では上下に隣り合った2つの層をペアとして、2層を組み合わせた厚みを一定に保ちながらも、埋め込む情報に応じて両者の厚みのバランスを変化させ、「0」「1」の2進法で表すデジタル情報を表現できるように制御して造形を行う。表面に刻むのではなく、層の厚みのバランスを制御するため、造形物の外形そのものにはほとんど影響を与えない。
また、造形物をドキュメントスキャナで撮影することで、樹脂の層の厚みを精細に画像化することができる。今回は層の厚みの変化を検出する画像処理技術も開発し、埋め込まれた情報を取り出すことができるようになった。
研究成果は、IEEE Transactions on Multimedia(TMM)にEarly Accessにてオンライン公開された。
(詳細は、http://www.naist.jp)