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多重フォトニックセンサ、ミルクの汚染を検出

January, 17, 2020, Dresden--EU助成プロジェクトMOLOKOで、フラウンホーファーの研究チームは、パートナーとともに、ミルク(牛乳)の安全性と品質パラメータを迅速、オンサイトで分析する新しいオプトプラズモンセンサを開発する。この早期警戒システムは、業界にとっと大幅な時間と支出の節約、廃棄物の大幅な削減となり、サプライチェーン全体のパフォーマンス向上に役立つ。

酪農では、食品の高い安全基準、品質基準はあるが、微量の不純物、殺虫剤、抗生物質が牛乳に侵入することがあり、時には消費者の健康に深刻な結果が生ずることがある。EU助成プロジェクトMOLOKOでは、フラウンホーファーの研究チームがパートナーと協力して、牛乳の安全と品質パラメータを迅速かつオンサイトで分析する、新しいオプトプラズモニックセンサを開発した。早期警戒システムは、酪農産業に時間と費用の大幅な節約をもたらし、廃棄物を飛躍的に減らすことになる。これは、サプライチェーン全体のパフォーマンス向上に役立つことになる。

食品産業、特に酪農分野では、食品の安全は極めて重要である。ここでは乳房感染が、ミルクに侵入する有害生物につながる。また、抗生物質や殺虫剤などの化学物質が、飼料、あるいは装置や蓄積施設の不十分な管理の結果、生産物を汚染することが考えられる。不純物が混じったミルクが食品連鎖に入ることを防ぐために、生産プロセスとサプライチェーン全体で検査が実施される。しかし、この標準検査は高価で時間がかかる。サンプルは、任意数の酪農家から集めた混合産物を含むミルクタンカーから取り、次にラボで分析される。そのミルクが汚染されていることが証明されると、積み荷全体が廃棄されなければならず、関連する農場や酪農家全体にとって大きな損失になる。それがタンカーに集められる前に農民が自分のミルクをチェックするテストがあれば、そのような無駄は回避できる。

品質検査結果は5分で得られる
MOLOKO (Multiplex phOtonic sensor for pLasmonic-based Online detection of contaminants in milK)プロジェクトには、7ヵ国(酪農家を含む)が、ミルクのQ値を特定する、高速、安価なテストを開発した。5分程度のテストで、新しい光プラズマセンサが、ミルクがタンカーに積まれる前に、全部で6種の物質について製品を分析し、サプライチェーン内で補完的チェックと早期警戒システムを提供している。センサは、ミルクの様々な品質と安全パラメータの指標として働く特異抗体のレセプタで機能する。これにより、酪農家は自動的にオンサイト品質分析を実施することがてきる。

独自の集積センサアーキテクチャ
 システム全体は、再利用可能微小流体チップ、有機発光トランジスタ(OLETs)、つまりOLEDs、有機フォトディテクタ(OPDs)を構成するセンサ、ナノ構造プラズモングレーティングと特異抗体で構成されている。有機フォトディテクタは、フラウンホーファー有機エレクトロニクス研究所、電子ビームとプラズマ技術FEPで開発されており、マイクロ流体チップは、フラウンホーファー電子ナノシステムENASで開発されている。OLETは、ボローニャのCNR-ISMNで、フォトニックグレーティングは、イタリアのPlasmore Srlが開発している。プロジェクトのとりまとめは、CNR-ISMN。

「われわれのチップの独自性は、再利用できることである」とフラウンホーファーENASの研究者、Andreas Morschhauserは言う。「標的分子は、再生バッファにより、固定化抗体から剥ぎ取られれた。つまり、その抗体は、さらなるテストに再利用できる」とフラウンホーファーENASの、Andreas Morschhauserは説明している。実際、チップの推定寿命は100テストサイクルである。各テストで、汚染に関係する全6パラメータとタンパク質が計測される。この目的のために、研究チームは、置き換え可能な自動化、微小化カートリッジの形態で、マイクロ流体システムを開発した。ミルクの安全性と品質の情報提供に加えて、計測されたパラメータは、各乳牛の健康と状態について農民に教える。これは、早期に感染を見つけ、直ちに処置を開始する上で役立つ。タイムリーな処置は、抗体のより賢明な管理に、したがって、その利用減につながる。

表面プラズモン共鳴用のナノ構造グレーティング
 フラウンホーファーFEPの研究者、Dr. Michael Törkerは、「トランジスタから放射された光が、テストされる様々な物質に特化された抗体でコーティングされたグレーティングに当たる。ミルクがグレーティングの上を勢いよく流れると、ミルクのあらなる標的分子が抗体と結合する。これがグレーティングのすぐそばで屈折率を変える、するとこの光の反射のされ方が変わる。反射光は、フォトディテクタで記録され、それが屈折率の微小変化を計測する」とテストについて説明している。この基本的な現象は、特殊構造のナノグレーティング上で起こり、表面プラズモン共鳴として知られている。それにより、迅速かつ高感度読み取りができる。

目的は、価値連鎖の様々なポイントでこのバイオセンサを使うことである。ラボデバイスとして、直接酪農装置にインストールして使用する。さらに、ミルク以外の液体の品質テストにも適している。例えばビールや水。必要な唯一の調整は、固定化キャプチャ分子と必須の反応バッファの変更である。これは、キャプチャ分子を当の目的に適するように替えるだけである。

研究成果は、CES 2020で紹介された。