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Science/Research 詳細

ヴュルツブルク大学、データ転送用ナノアンテナ

January, 14, 2020, Würzburg--ユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク(University of Würzburg)の物理学者は、電気信号をフォトンに変換し、わずか800nmの光アンテナを使い特定方向に放射することに初めて成功した。

指向性アンテナは、電気信号を電波に変換して、特定の方向に放射し、性能を高め、干渉を減らす。この原理は、電波技術に役立ち、微小光源にとっても興味深い。ほとんどすべてのインターネットベースの通信は、光通信を利用している。光の指向性アンテナを使って、損失なく、光のスピードで様々なプロセッサコア間でデータ交換できる。可視光の極短波で動作するアンテナを可能にするには、そのような指向性アンテナをナノメートルスケールに縮小しなければならない。

ヴュルツブルクの物理学者は、今回、この技術の基礎を固めた。Nature Communicationsで、チームは、金でできた電気駆動Yagi-Udaアンテナを使って指向性赤外光の生成法を初めて説明している。そのアンテナは、Bert Hecht教授のナノオブティクスワーキンググループが開発した。同教授は、University of Würzburgの実験物理学5のチェア。Yagi-Udaという名は、1920年代にそのアンテナを発明した二人の日本人研究者、宇田新太郎、八木秀次から取っている。

光アンテナ技術の適用
Yagi-Udaアンテナを光に適用する。基本的に、それは電波用と同じように機能する、とナノオブティクスチームのメンバー、Dr. René Kullockは説明している。AC電圧を印加すると、金属中の電子が振動し、アンテナは、結果的に電磁波を放射する。「しかし、Yagi-Udaアンテナの場合、これは、すべての方向に均一に起こらない。いわゆるリフレクタとディレクタ、特殊素子を使い放射波の選択的重ね合わせを通してだけである。「これは、1方向で強め合う干渉、他のすべての方向では弱めあう干渉となる」。したがって、そのようなアンテナは、受振器として使うとき、同じ方向からの光だけを受信できる。

アンテナ技術の法則を、光を放出するナノメートルスケールのアンテナに適用することは、技術的に難しい。以前に、Würzburgの物理学者は、電気駆動光アンテナの原理が機能することをすでに実証できている。しかし相対的に複雑なYagi-Udaアンテナを作るには、新しいアイデアが必要だった。最終的に、高度な製造技術によって、チームは成功した。「われわれは、ガリウムイオンを金に衝突させた。これにより、高純度金結晶から必要な接続配線とリフレクタ、ディレクタのアンテナ形状を極めて高精度に切り出すことができた」とBert Hechtは説明している。

次のステップでは、研究チームは金ナノ粒子を能動素子に設置した。それが能動素子の1配線に触れ、同時に他の配線とわずか1nmの距離を維持するようにした。「このギャップは非常に狭く、量子トネリングとして知られるプロセスを用いて電圧が印加されると電子が、そのギャップを横断する」とKullockは説明している。この電荷運動は、アンテナに光周波数の振動を生み出す。リフレクタとディレクタの特殊配置により、光周波数は特定方向に放出される。

ディレクタ数に正確に依存
Würzburgの研究者は、その新しいアンテナ特有の特性に魅かれている。小さいにも関わらず、そのアンテナは特定の方向に光を放出する。大きなアンテナ、電波アンテナと同様、新しい光アンテナの光放出の方向性精度は、アンテナ素子の数によって決まる。「これにより、われわれは、特殊方向に光を放出できる世界最小の電気駆動光源を構築できた」とHechtは話している。

とは言え、新発明の実用までには、まだなすべきことが多くある。まず、光信号を受ける側に取り組まなければならない。次に、効率と安定性を高めなければならない。

(詳細は、https://www.uni-wuerzburg.de)