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NIMS、光を当てるだけで電流に伴って生じる熱流を自在に制御

January, 9, 2020, つくば--NIMSは、磁性体に光を照射することにより、電流に付随して生じる熱流の方向や分布を自在に制御できることを初めて実証した。
 この研究は、熱エネルギーの能動的な制御を可能にする磁性材料の新しいポテンシャルを明らかにしたものであり、ナノスケール電子デバイスにおいて重要となっている熱マネジメント技術への将来展開や、磁気・熱・光の相互作用に関する基礎物理・物質科学のさらなる発展が期待される。

金属や半導体における電流と熱流の変換現象は熱電効果と呼ばれ、代表的な例として電流に伴って熱流が生成されるペルチェ効果が古くから知られている。ペルチェ効果によって生成される熱流の方向は物質によって決まっているが、磁性体においては、電流に伴う熱流の方向を磁気の源であるスピンの性質によって制御することができる。近年、スピン制御技術の向上に伴い、スピンを用いて熱エネルギーを有効利用するための新原理・機能の創出を目指す「スピンカロリトロニクス」に関する研究が世界中で急速に進展している。

NIMSの研究チームは、これまでスピンカロリトロニクスと全く接点の無かった光磁気記録の技術に注目し、光でスピンを制御することで、新しい熱エネルギー制御機能を創出した。今回実証した手法を用いれば、磁性体中の光が照射された部分において、光の偏光状態に依存して電流に伴う熱流の方向を局所的に変えることができるため、熱電効果によって発生する温度変化分布を自在にデザインすることが可能になる。

今回の実証実験に用いた物理現象は磁気・熱・光の相互作用に起因するものであり、従来のペルチェ効果とは異なる原理によって駆動される。今後NIMSは、光に応答する磁性体が示す熱電効果の微視的起源の解明と新材料開発を進めることで、電子デバイスの効率向上・省エネルギー化に資する熱マネジメント技術への応用を目指す。

研究成果は、Nature Communicationsにオンライン掲載された。

(詳細は、https://www.nims.go.jp)