January, 7, 2020, Zurich--光ビームを素早くスイッチングすることは、多くの技術的アプリケーションで重要である。ETHの研究チームは、現在のモデルよりも大幅に小型で高速な光ビーム用の「電気-オプトメカニカル」スイッチを開発した。これは、自動運転車や光量子技術などのアプリケーションに関係するものである。
自動運転車は、近年ますます改善が進み、高信頼になってきているが、近い将来、道路で完全自律走行できるようになるまでには、解決すべき障害がある。特に、光の速さで周囲を評価し、人やモノを認識する必要性は、現状の技術では限界に直面している。ETH-Zurichの電磁場研究所、Jürg Leutholdをリーダーとするチームは、米国のNIST、スウェーデンのChalmers Universityの研究者とともに、新しい電子・光メカニカルスイッチを開発した。これにより、将来両方の問題がうまく解決できる可能性がある。
これを達成するために研究チームは、「プラズモニクス」として知られる魔法の成分を使った。この技術では、光波は、光波長よりもはるかに小さな構造に詰め込まれるが、光学法則では、それは不可能である。しかし、金属と誘電体の間の境界に沿って光を導波することで可能になる、誘電体は、電流を伝導しない空気またはガラスのような物体である。
光の電磁波は、部分的に金属に浸透し、その内部の電子を振動させる、つまりプラズモンである。10年以上前に、著名な物理学者がすでに、プラズモンベースの光スイッチが、データ伝送やデータ処理で革命を起こすと予言していた。いずれもフォトンで、従来のエレクトロニクスよりも、遙かに高速にできる。
しかし、これまでのところ、実際の商用アプリケーションは失敗している。プラズモンデバイスに光を伝導する際の損失が大きいこと、スイッチングに高電圧が必要なためである。
プラズモニクスの力を活用
研究リーダー、論文の筆頭著者、Christian Haffnerは、「プラズモニクスの良い特性を活用し、悪い特性を最小化することで、われわれはこれらの問題を解決した」と話している。研究チームが開発した電子・光・メカニカルスイッチの中心的な特徴は、わずか40nm厚、数µm幅の金膜である。これは、アルミニウム酸化ディスクによってシリコン基板から分離された。
この構成で、金膜と基板との間のギャップサイズを機械力で制御できる。電圧を印加すると、膜がわずかに曲がり、その結果、ギャップが小さくなる。
すると、ギャップのサイズが、金膜で光波を通すか偏向させるかどうかを決める。これが、プラズモンが使われるところである。実際、ギャップのある程度の幅では特定波長のプラズモンだけが、金膜で励起される。光が別の波長であれば、それは膜に結合せず、シリコン導波路内部で直進するだけである。
小さな損失とスイッチング電圧
Haffnerの説明によると、「スイッチング膜の周囲で非常に短い距離をプラズモンが移動するので、現在の電子・光スイッチと比べると、損失は大幅に小さい。また、金膜は非常に小さく薄く作製しているので、小さな電圧で非常に高速にスイッチングできる」。
研究チームは、その新しいスイッチが、1V程度の電圧で1秒に数100万回ON/OFFできることをすでに実証した。これは、電気・光スイッチに使用されている大きくて電力を食うアンプを不要にする。将来、研究チームは、金とシリコンとの間のギャップをさらに小さくすることでスイッチを改善する計画である。これにより、光損失もスイッチング電圧も大幅に低減できる。
アプリケーションは自動車から量子技術
その新しいスイッチの潜在的アプリケーションは多い。例えば、自動運転車用のLiDARでは、光ビームの強度と伝搬方向が超高速に変えられると、高速でコンパクトなスイッチの恩恵を受ける。
さらに、自動車を操舵するパタン認識も、そのスイッチで加速される。その目的には、スイッチが人の脳を真似た光ニューラルネットワークで使える。そこでは、ネットワークがある対象物を、特に光の速度で認識することを「学習する」ウエイティングエレメントとして利用される。
通常、電流で動くそのような回路の光実装も、他の分野ではホットトピックである。光量子回路も量子技術実現のために研究が盛んである。今まで、光量子回路は、古典的な光スイッチがサポートしてきた。そのようなスイッチは一般に材料の屈折率変化に基づいている。加熱すると、それによって光ビームの曲がり角を変える。
しかし、これはスローなプロセスであり、最終的には、量子コンピュータのqubitsなど他の量子エレメントの低温に適合しない。実際に、全く過熱しない高速スイッチが、そのようなアプリケーションには必要である。