November, 22, 2019, Gaithersburg--通常、医療機関で誰かが耳に入れたり、熱があるときに額に近づけるまでは、放射温度計に出遭うことはない。しかし一段と高度な、十分に校正された研究グレード「非接触」温度計は、ヘルスケア以外の多くの用途で極めて重要である。そのような温度計は、触れることなく物体が発する赤外放射を計測する。
とはいえ、ハイエンドの従来タイプ放射温度計でさえも、困ったことに読取りで大きな不確かさが出る。しかし、NISTの研究者は、60㎝程度のポータブルで著しく安定な基準品質放射温度計を開発した。これは、1℃の数千分の1以内の精度で温度を計測する。
NISTは、放射温度計の研究で長い歴史を持つ。新しいプロトタイプ計測器は、その研究に基づくもので、-50 C (-58 F) ~ 150 C (302 F)の範囲の温度を計測できる。対応する赤外波長は、8~14µmで、これは一種の熱力学的スイートスポットである。
「全ての温度は平等であるが、他のものよりもさらに平等なものもある」とNIST物理学者、Howard Yoonは言う。同氏がその温度計を設計し、プロジェクトを指揮した。研究成果は、Optics Expressに発表されている。「その200℃スパンは、地球上に起こるほぼ全ての温度をカバーする。その範囲の対象の計測で大きな影響を与えるなら、それは実に重要である」。
臨床医学だけでなく、その領域の温度は、接触が適切ではなく、実行可能でないアプリケーションでは極めて重要である。例えば、外科医は、移植に先立ち臓器の温度を計測する必要がある。現代農民は、食糧の取扱い、貯蔵、加工で、正確な温度を必要としている。衛星は、地上や海面の温度計測に非接触温度計を必要としている。
従来の放射温度計は、赤外放射を収集するためのレンズと、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスであるパイロエレクトリックセンサを含んでいるにすぎない。計測は、温度計に沿った温度差、測定器の外の温度に影響され得る。
NISTの設計、Ambient-Radiation Thermometer (ART)は、計測器の多様な点で絶えず温度を計測する一連の内部温度計を装備している。その読み取りは、フィードバックループシステムに送られる。これは、ディテクタアセンブリを含む30㎝シリンダを一定の温度23℃に保っている。
他にも設計改善があり、いわゆるソースサイズの影響からのエラーを低減する方法が含まれる。つまり、放射が特定の視野の外側のエリアから測定器に入る時の影響である。
ARTの主な利点は、前例のない安定性である。標準グレード接触温度計に対してキャリプレートされた後、その測定器は連続動作で数カ月、1℃の数1,000分のなにがしか以内に安定している。このため、同システムは、長期の遠隔センシングに関わるアプリケーションには非常に有望である。
「陸や海面の温度などの変動を正確に計測するために、移動する放射温度計としてNIST設計をフィールドに持ち出すことを考える。サテライトIRセンサのキャリブレート、ハリケーンの進路や力を予測するために使用される膨大な天候科学プログラムの評価の信頼できる方法として、NIST設計温度計は役立つ」とYoonは説明している。その温度計の低温域-50℃は極地を覆う氷の温度、一般に-40 C (-40 F) to -10 C (14 F)の範囲の温度モニタに適している。
高精度温度計測法はいくつかあるが、フィールドでの利用に適したものはほとんどない。白金抵抗温度計は脆弱であり、周波数の再構成を必要とする。ARTにそのキャリブレーションを送るための基準温度源は、約42リットルの液体内熱源キャビティを必要とする。
「それらは、われわれが持つベストなソースである。しかし、間隔を置いて海に温度計を入れることで水温を計測するのは実用的ではない。また、船上のそのような校正源を使って放射温度計を絶えず校正したいとは考えないだろう」。
NISTセンサ科学部門長、Gerald Fraserは、「Yoonのイノベーションは、人が日々経験する温度範囲で、精度と安定性において、非接触温度測定を最良の商用接触温度計に匹敵するものにしている。これにより、多くのアプリケーションが可能になる。製品検査、品質制御、防衛やセキュリティなど、従来の接触法が実用的ではない、あるいは高価すぎるようなところである」と同氏はコメントしている。