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光ベース「トラクタビーム」、ナノスケールで材料を組立

November, 15, 2019, Washington--ワシントン大学の研究チームは、ナノスケールで再現性よく製造できる方法を開発した。チームは、生物学で広く用いられている光ベースの技術、光ピンセットを適用し、炭素に富んだ有機溶媒のウォーターフリー液体環境で操作する。これにより、新しい潜在的アプリケーションが可能になる。
 チームは、Nature Communicationsに論文を発表した。光ピンセットは、光ベースの「トラクタビーム」として機能し、ナノスケール半導体材料をより大きな構造に正確に組み立てることができる。SFのトラクタビームと違い、チームは光ピンセットを使って1mの10億分の1程度の材料をトラップする。
 UW材料科学・工学准教授、Peter Pauzauskieは、「製造プロセスに関連するチャンバ表面はない、これが歪、他の欠陥の形成を最小化する。コンポーネントのすべてが溶液中に漂っており、一つずつアセンブリされるにしたがい、ナノ構造のサイズと形状を制御することができる」と説明している。
 「有機溶媒中でこの技術を使用することで、他の方法では水あるいは空気と触れて劣化、腐食するコンポーネントを取り扱うことができる。有機溶媒は、われわれが取り扱っている材料の過熱にも役立ち、われわれは材料の変形を制御し、化学作用を促進することができる」と化学工学准教授、Vincent Holmbergは話している。
 このアプローチの可能性を証明するために研究チームは、光ピンセットを使って新しいナノワイヤへテロ構造を作製した。これは、異なる物質で構成された明確なセクションでできたナノワイヤである。ナノワイヤへテロ構造の出発材料は、それぞれが数100nm長、数10nm径の結晶性ゲルマニウムの短い「ナノロッド」。各々が金属ビスマスナノ結晶で覆われている。
 研究チームは次に、光ベースの「トラクタビーム」を使い、ゲルマニウムナノロッドの一つを捉える。ビームからのエネルギーナノロッドを過熱し、ビスマスキャップを溶かす。次に第2のナノロッドを「トラクタビーム」に誘導し、先端の溶けたビスマスキャプにより、その端を接合する。研究者は、そのプロセスを繰り返し、最終的にパタン化されたナノワイヤヘテロ構造をアセンブルした。これは、個々の構成要素よりも5~10倍長い反復的半導体金属接合を持っている。
 「われわれは、この光学的に方向づけられたアセンブリプロセスをフォトニックナノソルダリングと呼ぶようになった。基本的に、光を使ってナノスケールで2つのコンポーネントを接合する」とHolmbergは説明している。
 材料間の接合を含むナノワイヤ、UWチームが合成したゲルマニウム-ビスマス接合など、ナノワイヤは、究極的には量子コンピューティングのアプリケーション向けにトポロジカルqubitsを作る道になる。
 実際、トラクタビームは、一種の光トラップを作る高度に集中したレーザである。今日まで、光トラップは、水または真空ベースの環境で排他的に用いられてきた。研究チームは、有機溶媒のより不安定な環境における作業に光トラッピングを適用した。
 「どんな種類の環境においても安定した光トラップを生成するとは、微妙な力のバランスをとることである」とHolmbergは言う。
 レーザビームを構成するフォトンは光トラップのすぐ近くの対象物に対して力を生成する。研究チームは、生成された力が物体をトラップしたり解放したりできるようにレーザの特性を調整することができる。それが単一のゲルマンナノロッドであっても、より長いナノワイヤであっても可能である。
 「これは、確実で再現性のあるナノファブリケーション法に必要な種類の正確さである。ナノ材料に欠陥や歪を導入する他の表面。あるいは物質とのカオス的な相互作用がないからである」とPauzauskieは説明している。
 研究者は、このナノソルダリングアプローチにより、多様な材料でナノ構造を他のアプリケーション向けに積層造形すると考えている。