November, 11, 2019, Wien--ウィーン工科大が(TU Wien)で開発された新しいプロセスで、3Dプリンターで作製した微細構造に、高速に、高分解能で生細胞を組み込み可能である。
組織の成長、細胞の挙動は、繊細な3Dフレームワークに細胞を埋め込むことで非常によく制御でき、調べることができる。これは、アディティブ3Dプリンティング法、いわゆる「バイオプリンティング」技術を使うことで達成される。しかし、これには多くの課題がある。ある方法は非常に不正確、あるいは、細胞が損傷を受けずに処理されるウインドウが非常に短い。加えて、使われる材料は、3Dバイオプリンティングプロセス中もその後も、セルフレンドリでなければならない。これは、可能性のある材料の多様性を制限することになる。
全く新しい材料による高分解能バイオプリンティングプロセスが、TU Wienで開発された。3Dプリンター用の特殊な「バイオインク」により、細胞は、マイクロメートル精度でプリントされた3Dマトリクスに埋込可能である。プリンティング速度は1秒に1メートル、以前に可能だったよりも桁違いに高速である。
環境が重要
材料科学・技術研究所、3Dプリンティングとバイオファブリケーション研究グループ長、Aleksandr Ovsianikov教授によると、細胞の挙動は、その環境の機械的、化学的、幾何学的特性に依存するところが大きい。「細胞が組み込まれている構造は、その細胞が生存して増えるように栄養素に浸透していなければならない。しかし、その構造が硬いか柔軟か、安定か、徐々に分解するかも重要である」。
最初に適切な構造を作り、次に生きた細胞でコロニーを作ることができるが、このアプローチでは、細胞をスカフォールド深部に設置することが難しくなり、そのような方法で均一な細胞分布を達成することはほとんど不可能である。遙かに優れたオプションは、構造の構築中に生きた細胞を直接3D構造に組み込むことである、この技術は、「バイオプリンティング」として知られている。
微視的な微細3D物体をプリントすることは、今日、もはや問題ではない。しかし、生細胞の利用は、全く新しい課題を持つ科学である。「今までは、単に適切な化学的物質がなかっただけである。集光レーザビームで照射したその場で正確に凝固する液体あるいはジェルが必要である。しかし、これらの材料は細胞に有害であってはならない、またプロセス全体は、極めて迅速に起こらなければならない」とAleksandr Ovsianikovは説明している。
同時に2光子
超高分解能を達成するために、ここ数年TU Wienでは2光子重合化法が利用されてきた。この方法は、材料の分子がレーザビームの2光子を同時に吸収するときにだけ始まる化学反応を利用する。これは、レーザビームが特に高強度となるところでのみ可能である。これらのポイントで、物質は凝固し、一方、他のどこでもそれは液体のままである。したがって、この2光子法は、非常に微細な構造を高精度に製造するベストな方法である。
しかし、この高分解能技術は、通常、非常に緩慢であるという不利な点がある。多くは、1秒に数マイクロメートあるいはミリメートルの範囲である。TU Wienでは、しかし、細胞フレンドリーな材料を1秒に1メートルを超えるスピードで処理できる。全プロセスが数時間以内に完了できる時にのみ、細胞の生存とさらなる発展の可能性が高くなる。
多くの新しいオプション
「われわれの方法は、細胞の環境に適応させる多くの可能性を提供する」とAleksandr Ovsianikovは言う。構造の構築法に依存して、硬くも、柔らかくもできる。精細で連続的な勾配さえも可能である。この方法では、所望の細胞成長と細胞移行を可能にするために構造がどのように見えるかを正確に定義できる。レーザ強度を利用して、時間とともに構造がいかに容易に分解されるかを決めることもできる。
これは細胞研究で重要な前進であるとOvsianikovは、確信している。「これら3Dスカフォールドを使うことで、以前には達成不可能だった精度で細胞の挙動を研究することができる。病気の蔓延の研究も可能であり、もし幹細胞が使われるなら、この方法で特別仕様の組織を生成することさえできる」。
研究プロジェクトは、国際的、学際的協力であり、それにはTU Wienの3つの研究所が関わっている。
(詳細は、https://www.tuwien.at)