October, 10, 2019, 札幌--北海道大学低温科学研究所の渡部直樹教授らの研究グループは,真空中で極低温の純氷を作製し,そこへ紫外線と電子を照射することで氷中にマイナスの電気が流れることを発見した。また,その電流は紫外線のオン・オフで鋭敏にコントロールできることがわかった。
従来,氷は金属とは異なり,その内部に自由に動き回れる電子(マイナスに帯電)を持たないため,電子の流れによる電流をほとんど通さないと考えられていた。研究グループは,この現象を説明するために理論計算を行い,紫外線を照射することにより氷表面の水分子(H2O)が分解し,OHが生成され,そのOHが氷内で電子を運ぶマイナス電気のキャリアとなって動き回ることを明らかにした。発見した現象は,氷内に電気を流すための電解質の不純物を一切必要としない。
この研究では,従来全く想像されていなかった以下の3つの知見が画期的といえる。
①氷中にマイナスの電気が定常的に流れうることを発見。
②マイナスの電気の流れは紫外線でコントロールできる。
③従来知られていた氷中のプラス電気の流れとは異なり,極低温でも電気が流れる。
今後は,この現象をより幅広い温度領域で,氷の構造,紫外線強度などを変えて調べていく予定。
研究成果は, Chemical Physics Letters誌に掲載された。
(詳細は、https://www.hokudai.ac.jp/)