October, 10, 2019, 東京--東京大学、九州大学他の研究グループは、韓国の成均館大学のJ.R.Ahn教授との共同研究で、グラフェンの準結晶状態における質量ゼロの電子の超高速変化を光電子分光の時間分解測定により直接観測、ダイナミクスの追跡に世界で初めて成功した。その結果、準結晶グラフェンでは、「質量ゼロ」の電子が保存されたまま、0.1ps(ピコ秒)という超高速な時間で、層間に30mVの電圧印加がなされることが分かった。
グラフェンは大規模な情報通信を行う次世代光デバイスの有力な材料であり、その情報を伝える高速電子の運動に高い注目が集まっている。中でも、「ねじれ角」をつけて積層したグラフェンは最近、超伝導状態が観測されるなど、新しい物性の発現が期待されている。この研究で用いられた準結晶状態のグラフェンは、2枚を30度に「ねじって」重ねることで実現する。
今回の発見で、準結晶状態及び「ねじれ積層」が、質量ゼロの電子の超高速移動において新しい制御法として利用できることが分かった。今後、この研究成果を元に、質量ゼロ粒子による次世代光デバイス開発が大きく促進されることが期待される。
研究成果はACS Nano掲載された。
研究グループ
東京大学物性研究所の鈴木剛研究員、松田巌准教授、岡﨑浩三准教授、小森文夫教授らの研究グループ、九州大学大学院工学研究院の田中悟教授、東北大学電気通信研究所の吹留博一准教授の研究グループ。