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東京農工大、レーザ光の波形を電子の複雑なふるまいに追従させる

September, 25, 2019, 東京--東京農工大学大学院工学研究院の伊藤宙陛特任助教、同大学院工学研究院の三沢和彦教授、筑波大学数理物質系の野村晋太郎准教授の共同研究グループは、レーザ光の持つ波形をフェムト秒(fs)単位で正確に制御する技術を駆使し、半導体中の電子の持つ微小な磁石の方向を操作する新しい方法を発見した。さらに電子の持つ微小な磁石の向きに応じてその運動を光で操作することに成功した。
 この方法は電子の位置や運動方向に加えスピンと呼ばれる微小な磁石としての性質、すなわち電子の持つ全ての物理的自由度を制御できるため、光の新たな活用法として広く応用が期待される。

物質の中の電子は様々なエネルギーの状態を持つが、研究グループの光制御技術を用いると特に半導体中を流れる電子のような低いエネルギー差に電場の振動を合わせた光を作ることが可能となる。さらに物質中の電子が受け取りやすいエネルギーの値に合わせながら、ねじれた光の持つ回転力を電子に及ぼすことで、個々の電子の持つ微小な磁石の向きを一斉にそろえることができる。
 研究グループでは光で操作する対象の電子として半導体量子井戸構造中の伝導する電子を採用した。この半導体量子井戸構造では、電子は2次元面内に運動が限定され、その際、異なる磁石の向き(スピン)を持つ電子はそれぞれ異なる方向に流れるような仕組みが施されている。従って光によって磁石の向きが反転させられた場合には、電流の向きも逆転し、その結果、半導体構造に設置された電極間に生じる電圧に変化が生じる。実際にねじれ偏光パルスを半導体中の電子に照射すると、電子の持つ微小な磁石の向きが揃えられ、狙った方向に電子が移動する様子が確認された。ねじれの周波数が電子の持つ周波数差である50 THzに近づくほど、照射する光のねじれる方向に応じて電子の持つ磁石の向きが反転し、電子の進む方向が反転する様子を捉えることに成功した。

研修成果は、Optics Expressに発表された。
(詳細は、http://www.tuat.ac.jp)