Science/Research 詳細

キラルな層状ペロブスカイト型半導体で光起電力を発現

September, 24, 2019, 仙台--東北大学金属材料研究所の谷口耕治准教授、宮坂等教授らは、有機・無機ハイブリッド層状ペロブスカイト型半導体にキラル分子を組み込むことで、光起電力の起源となる電位差界面(p-n接合のような異なる物質同士が接する界面)を必要としない光起電力効果(バルク光起電力効果*5を発生させることに成功した。
 有機・無機ハイブリッドペロブスカイト型半導体は、近年、高効率の太陽電池材料として脚光を浴びている材料だが、光起電力を発生させるには、他の物質と貼りあわせて、電位差を生成する界面(電位差界面)を作る必要があZた。研究グループは、有機・無機ハイブリッド型半導体の構成要素の有機分子にキラリティを持たせることで、バルク光起電力効果の発生に必要な環境(反転心を持たない状態)を意図的に作り出すことに成功した。今回開発した半導体では、組み込んだ分子のキラリティに依存して光起電力の符号が変わるといった、これまでのバルク光起電力材料にはない性質も観測されている。
 これまでバルク光起電力効果が研究されてきた無機化合物では、反転心を持たない半導体を新たに設計することは困難なことから、この研究の「有機・無機ハイブリッド化合物にキラル分子を導入する」という手法は、バルク光起電力材料の開発に新たな道筋をつけるものと期待される。

研究の要点
・高効率の太陽電池材料として脚光を浴びる「有機・無機ハイブリッドペロブスカイト型半導体」の類縁体に新しい性質を持たせた材料設計に成功
・キラル分子*2を組み込むことで、光起電力を発生させるために必要だった電位差界面を必要としない光起電力効果の発生に成功
・当手法はバルク光起電力材料の開発に新たな道筋をつけるものと期待

 研究成果は、米国化学誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されまた。
(詳細は、http://www.tohoku.ac.jp)