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空間分解能1ナノメートルの共鳴ラマン分光を実現

August, 5, 2019, 東京--マックス・プランク協会 フリッツ・ハーバー研究所 物理化学部門の熊谷崇グループリーダーの研究チームは、株式会社ユニソクと共同開発した低温探針増強ラマン分光(TERS)装置によって鋭い金属の針先に発生するナノスケールの光(局在表面プラズモン(LSP))を使った顕微振動分光を行い、およそ1ナノメートル(nm)の空間分解能で共鳴ラマンスペクトルを取得することに成功した。
 複雑な不均一触媒の反応機構を解明するには、固体表面で反応の活性点となっている原子レベルの構造と分子の動的挙動(化学反応)を調べる必要があり、光の回折限界を超えた超高感度のナノスケール化学分析法が必要とされている。
 代表的な化学分析法であるラマン分光は、振動スペクトルから物質や分子の構造や反応を詳細に調べられる優れた手法。特に、共鳴ラマン分光は測定試料の電子状態に敏感なため、不均一触媒の反応活性点を選択的に調べられる可能性がある。しかし、従来のラマン分光の空間分解能は光の回折限界によって200~400nm程度に制限されており、原子レベルの構造や分子の動的挙動は直接観測できなかった。
 ラマン分光法と走査プローブ顕微鏡(SPM)とを組み合わせた先端計測技術であるTERSは原子・分子スケールの空間極限におけるイメージングと化学分析を同時に可能とする分析法として期待されている。
 研究チームは、触媒や透明電極材料として重要な酸化亜鉛超薄膜で精密なTERS測定を行い、ナノスケールの光による共鳴ラマン散乱の基礎的なメカニズムを世界で初めて解明しました。TERSスペクトルには強く増強された酸化亜鉛超薄膜の振動モードが観測され、振動強度の局在表面プラズモン共鳴や励起波長に対する依存性を精密に計測した。さらに、走査トンネル顕微鏡(STM)によるナノスケールの走査トンネル分光(STS)とTERSを計測することによって、共鳴ラマン信号を1nmの空間分解能で得られることを示した。
 研究チームは今後この新しい技術を応用して、不均一触媒材料の表面構造や吸着した分子の反応ダイナミクスを直接調べる研究を進める予定である。
 研究成果は、Nano Lettersにオンライン掲載される。
(詳細は、https://www.jst.go.jp/)