July, 24, 2019, 大阪--大阪大学 産業科学研究所の藤田高史助教と大岩顕教授、理化学研究所 創発物性科学研究センターの樽茶清悟 副センター長(研究当時 東京大学 大学院工学系研究科教授)、ルール大学ボーフムのAndreas D. Wieck教授らの研究グループは、開発を続けてきたゲート制御型の半導体量子ドット構造を改良して、単一粒子レベルで角運動量が光子から電子へと移されることを実証し、光の単位である光子から作られた単一電子スピンを捉えて、その情報を読み取ることに成功した。
これまで光から生成された電子スピンを半導体中で検出するには、多数の粒子が必要とされており、単一光子から単一電子スピンへと形態を変換した時に、そのスピンの情報が正しく写されて、さらに利用できるかどうかについては解明できていなかった。
今回、研究グループは、従来は1つの量子ドットを使って、光で励起した電子を捉えることとスピンの読み取りの両方を実現しようと考え、トンネル効果によって隣接する電子スピンを新たに配置することにより光の影響を受けにくい安定したスピンの読み取りを可能にした。これにより、最も基本的な光-スピン間の変換原理が検証されるとともに、今後はこの技術を量子情報の単一光スピン検出器として利用し、重ね合わせ状態やもつれ状態にある円偏光などの光源を使い、より高度な量子力学的な情報を活用できる見込みがある。半導体量子ドットは量子計算機の構成要素(量子ビット)を収めるデバイスとしても研究開発されているので、この成果により小規模な量子計算機を結合することやその暗号通信の長距離化(量子中継)、将来的には量子インターネットへの貢献が期待される。
研究成果は、Nature Communicationsに公開された。
(詳細は, https://resou.osaka-u.ac.jp)