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深宇宙探査にAIディープラーニングが役立つ

July, 18, 2019, Cornell--銀河団は、宇宙で最も大きな構造であるが、直径数百万光年であっても、見分けるのは非常に困難である。
 ランカスタ大学の研究チームは、人工知能(AI)の支援を利用し、“Deep-CEE” (Deep Learning for Galaxy Cluster Extraction and Evaluation)(銀河団抽出と評価のためのDL)、を開発した。銀河団発見プロセスをスピードアップするための新しいディープラーニング(DL)である。
 同大学PhD学生、Matthew Chanは、この研究をRoyal Astronomical Society’s National Astronomy 2019会議、宇宙物理学セッションのマシンラーニングで発表した。
 宇宙のほとんどの銀河は、いわゆる「フィールド」、つまり小グループとして知られる低密度環境に存在する。これには、われわれのミルキーウエイやアンドロメダも含まれる。銀河団は、稀になっているが、それらは銀河が存在する極端環境を表している。また、それらの研究は、ダークマターやダークエネルギーの理解を深めるために役立つ。
 1950年代、銀河団発見の先駆者、天文学者、George Abellは、発見のために拡大鏡と写真板を使って、何年もかけて肉眼で銀河団を探査した。約2000写真板を手作業で分析し、銀河団の視覚的シグネチャを探し、銀河の高密度領域の天文座標を詳述した。同氏の業績は、北半球で発見される銀河団の「アベルカタログ」となった。
 Deep-CEEは、アベルの銀河団特定アプローチに立脚しているが、天文学者をAIモデルで置き換える。AIモデルは、色画像を見て、銀河団を特定できるようにトレーニングされている。それは、神経網をベースにした最先端のモデルであり、明確なパタンや色を視覚化する際に特殊ニューロンを活性化することでヒトの脳が対象認識を学習する方法を模倣するように設計されている。
 Chanは、そのアルゴリズムが対象物を独自に関連付けられるようになるまで、既知のラベル付けされた、対象物画像例を示すことでAIを繰り返しトレーニングした。次に、多くの他の天体を含む画像の中に銀河団を特定して分類するアルゴリズムの能力をテストするためのパイロット研究を実施した。
 「われわれは、Deep-CEEをSloan Digital Sky Surveyに適用することに成功した」とChanは言う。最終的に、Large Synoptic Survey telescope(LSST)大型シノプティック・サーベイ望遠鏡などの画期的な調査でわれわれのモデルを走らせる。LSSTは、これまで探査されたことのなかった宇宙をもっと広範かつ深くプローブする。
 新しい先進的な望遠鏡によって天文学者は、かつてないほど広範に深く観察することができるようになったので、宇宙の大規模構造を研究し、その膨大な未知の内容をマッピングすることができる。
 発見プロセスを自動化することで、研究者は一連の画像を迅速にスキャンすることができ、ヒトとの相互作用を最小にして、精密な予測をすることができる。これは、将来のデータ分析にとって重要である。もうすぐ実現するLSST天空調査(2021年の予定)は、南半球全体の空を撮像し、推定15TBのデータを毎夜生成する。
 「ディープラーニングのようなデータマイニング技術は、最新望遠鏡から出力される膨大なデータ解析に役立つ。われわれの方法が、これまで科学的に発見されていなかった数千の銀河団を発見すると期待している」とDr John Stottはコメントしている。