July, 5, 2019, Troy, N.Y.--レンセラー工科大学(Rensselaer Polytechnic Institute)の研究チームは、有望な2D材料、二セレン化タングステン(WSe2)を操作して、その可能性を解放し高速、高効率のコンピューティング、さらには量子情報処理や蓄積までを可能にする方法を考案した。研究成果は、Nature Communicationsに発表された。
世界中で研究者は、単層遷移金属二カルコゲン化合物として知られる2次元で、原子的に薄い半導体材料に大いに注目してきた。これら原子的に薄い半導体材料(厚さ1nm以下)は、魅力的である。産業が、より小型でエネルギー効率のよいデバイスを作ろうとしているからである。
レンセラー工科大学の化学・生物工学准教授、Sufei Shiは、「それは全く新しいパラダイムであり、利点は計り知れない」とコメントしている。
研究チームは、WSe2のこれら薄い層を結晶から分離する方法を開発した。目的は、窒化ホウ素やグラフェンのような薄い材料を原子的に相互にスタックできるようにするためである。
Shiによると、WSe2層が-窒化ホウ素片の間に挟まり、光と相互作用すると、独特のプロセスが起こる。従来の半導体と異なり、電子とホールは、強力に相互結合し、エキシトンと言われる電荷中性擬似粒子を形成する。
「エキシトンは、恐らく、光-物質相互作用で最も重要な概念の一つである。それを理解することは、太陽エネルギー収集、効率的なLEDデバイス、また半導体の光特性に関わるほぼすべてにとって極めて重要である」とShiは言う。「現在、われわれは、実際にそれが量子情報蓄積と処理に使えることを見いだした」。
WSe2におけるエキシトンの素晴らしい特性の一つは、「バレースピン」として知られている新しい量子自由度である。これは、量子コンピューティングに期待されている粒子の運動自由度拡張。しかし、エキシトンは一般に長寿命ではないので、実用にはならない。
以前にNture Communicationsに発表した成果では、研究チームは、寿命が長い特別な「ダーク」エキシトンを発見した。それの問題は、「ダーク」エキシトンに、「バレースピン」量子自由度がないことである。
今回のごく最近の研究で、研究チームは、「ダーク」エキシトンを明るくする方法を考案した。すなわち、「ダーク」エキシトンをフォトンとして知られている別の擬似粒子と相互作用させ、研究者がほしがる両方の特性を持つ完全に新しい擬似粒子を造る。
Shiは「われわれはスイートスポットを見つけた」と言う。「われわれは、量子自由度を持ち、長寿命の新しい擬似粒子を見つけた。われわれは、‘明るい’エキシトンの量子特性だけでなく、‘ダーク’エキシトンの長寿命も手に入れた」。
Shiによると、研究チームの成果は、次世代のコンピューティングとストレージデバイスに向けた今後の発展の基盤となる。
(詳細は、https://news.rpi.edu)